【いい加減が良い加減】ニットの寸法
セーターをはじめニットの良さの最たるものは着心地の良さですね。それはニットの特徴であるループによる編地の伸び縮みにあります。織物は縦糸に横糸を織り込んでいくので横にも縦にも伸びませんね。この織地の組織によって服は安定して形が崩れないんですね。一方、ニットは編地がループなので体の動きに合わせて伸びたり縮んだりしますからとっても着心地が良いんですが、この着心地が良い利点が厄介な問題も持っているんです。それは寸法が定まりにくいということです。
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ニットの寸法
セーターをはじめニットの良さの最たるものは着心地の良さですね。それはニットの特徴であるループによる編地の伸び縮みにあります。
織物は縦糸に横糸を織り込んでいくので横にも縦にも伸びませんね。この織地の組織によって服は安定して形が崩れないんですね。
一方、ニットは編地がループなので体の動きに合わせて伸びたり縮んだりしますからとっても着心地が良いんですが、この着心地が良い利点が厄介な問題も持っているんです。それは寸法が定まりにくいということです。
UTOは『お客様の希望の寸法で作ります』というカスタムオーダーが大きな特徴の一つですがこれは大変なリスクなのです。
当社ウェブサイトの販売ページに製品の基本サイズが明記してあります。但し書きに3%前後の違いはご容赦くださいとお願いしていますが、伸び縮みするニットを一枚一枚個別に作って指定通りに収めるのは至難の業なのです。
一般のニットは殆どが大量生産で、サイズ出しの仕上げはサイズ通りの寸法の型枠にはめて熱い蒸気を当ててサイズを固定させるのが普通です。
当社は編んだ通りのサイズ出しにこだわっていますので、セーター用の型枠はありません。
セーターを編む時には、何センチの巾にどれだけの針本数(目立)で、何センチの丈に対して何回編むというのを設計図(回数書)の通りに編みます。基本的にはデジタルな方法なんです。
その上、カシミヤニットは編みあがった時の寸法と、最終仕上のサイズが違います。
カシミヤニットの仕上げは縮絨という加工で風合いを出しますが、その縮絨の過程である程度の縮みが生じますのでお客様のサイズに上げるためには、その縮み具合を計算して編み立てるのです。
カスタムオーダーですので、お客様お一人一人の型ごとに指示書を作りますので大変な作業ですが、その指示書に従って、例えば2センチ巾を出すときには2センチ分の針立てを増やし、5センチ短くする時には5センチ分の編み回数を減らして編むことになります。
変更している個所の針数なり回数が変更になっているのは当然ですが、目数や回数は正確でも最終の巾や丈がそのまま出ないで微妙に違うことがあるんです。と言うよりしょっちゅう発生します。そこを長年の経験で微妙に調整しながら作り上げるのです。それこそ『作り上げる』という表現がピッタリだと思います。
このように微妙な差が生じるカシミヤニットですので、元の糸がとても重要です。同じ番手の糸で編んでも紡績会社の違いで寸法の違いが生じます。その違いは原料の違いや撚りの回数などは紡績会社ごとに違いますので、UTOカシミヤはずっと同じ会社の同じ番手のカシミヤ糸を使い続けることになります。
伸び縮みが特徴のニットですので、測る毎に、測る人ごとに誤差が出ることがあります。プロにとっては常識ですが、色の濃淡による違いから来る乱寸もあります。
『グレードの高いファッション製品だからミリ単位の細心の厳しさが当然でセンチ単位の違いが出るなんて理解できない』、と言われる方も少なくありません。特に布帛の専門家に多いようです。でもそのニットのいい加減なところが実は良いところなんです。
皆さんの着ているセーターを横に引っ張ったら何センチになりますか?多分30%ぐらいは簡単に伸びるでしょうしその反動で丈が10%ぐらい短くなってしまいます。このぐらいニットはいい加減なんです。
ヨーロッパなどからセーターを輸入する場合、同じ品番の同じサイズの同じ色でも3パーセントの乱寸のクレームは受け付けない、と最初から契約書に書かれています。だからと言って少々の違いは当然と言っているのでは決してありません。
まず、『ニットとはいい加減なもので、だからこそ良い加減』の着心地になることをどうぞご理解ください。なにせ、ニット日本語では『莫大小』って言うんですから。