【こだわりの自然乾燥】効率が悪くてもカシミヤに優しい乾燥法
UTOの工場の一角は、自然乾燥の為に天井から下がっている色とりどりのカシミヤ製品でいつも大賑わいです。あの、カシミヤの軽くて柔らかい風合いは前項でお話しした縮絨という工程を経て作られますが、UTOカシミヤは縮絨した後の乾燥が全て自然乾燥だと言うと業界の中では「いま時自然乾燥している処があるんだぁ」とびっくりされます。
カシミヤと365日向き合っているわたしたちユーティーオーが、保管・お手入れ・ケア・洗い方・お直しなど、カシミヤとたのしく付き合う方法をお伝えします。
UTOの工場の一角は、自然乾燥の為に天井から下がっている色とりどりのカシミヤ製品でいつも大賑わいです。あの、カシミヤの軽くて柔らかい風合いは前項でお話しした縮絨という工程を経て作られますが、UTOカシミヤは縮絨した後の乾燥が全て自然乾燥だと言うと業界の中では「いま時自然乾燥している処があるんだぁ」とびっくりされます。
UTOはセーターを着ていただいたとき、違和感がなく長すぎず短すぎず適度な余裕を持って自然に見えるというのが一番良いサイズだと思っています。
よく、「なぜ岩手の北上ですか?」と聞かれます。それまで縁もゆかりもなかった岩手に行ったのには奇跡と言えるほどの偶然が重なっていました。
タートルネックなどのかぶりのセーターを着るとき、この小さな丸いネックの開きが布帛だったら絶対に頭が入らないだろうなと思うことはありませんか?
UTO岩手の工場ではコンピュータ制御の編み機が活躍していますが、この編み機は今世の中に出回っているニットの柄のほとんどを編むことが出来る優れものです。人間の手で編めないものは無いといわれますが、複雑で細かい透かしや移しの柄や編地などの難しい柄をいとも簡単に編んでしまい、まるで魔法を見ているようです。
ニット作りは、大まかに「編み」・「リンキング(ニットの縫製)」・「縮絨(風合いだし)」・「乾燥(自然乾燥)」・「仕上げ」の工程で作られます。ニット作りのほとんどは人の手で行いますが、編みだけは最新のマシンです。そのマシンを操作するためにはプログラミングが不可欠です。
糸には必ず紡績のロットナンバーが記載されています。それが【ロット】です。
CCMI、(カシミヤ&キャメルヘア・マニュファクチャラーズ・インスティチュート)という高級な糸を紡績している世界的な協会があります。二十社にも満たない数ですが錚々たるメンバーです。
ニットの自慢話になってしまいそうですが、天然素材の原料で糸を作る(紡績する)とき、最も良い原料を使うのは実はニット用の糸なんです。
カシミヤの糸作りを極々簡単に言うと、一定量の原料をそろえてカーディングした後に撚りをかけることが糸づくりの基本です。
ニットを編むのに欠かせない糸。素朴な疑問ですが、糸ってなんでしょう?糸とは『ある程度の長さと細さの繊維を束ねて撚りをかけて長くしたもの』だそうで、莫とした言い方ですが正式な定義がないそうです。
カシミヤの微妙な色合いはカシミヤの繊維の細さにあると言う話をしましたが、もう一つ驚くことがあります。これを知った時はかなり驚きそして感動しました。
「カシミヤは繊細で良い色ですね!」と、皆さんが言ってくださいます。人は光の反射で色や影を判別しているそうです。物が平らだったり大きいと光は大きく反射して単純に見えますが、光の反射面が細かい程繊細な反射をします。カシミヤはウールの中で最も細い繊維ですので繊細な光の反射で独特の色合いが生れます。カシミヤの繊細で微妙な色合いはカシミヤ繊維の細さが大きく影響しているのです。
カシミヤ以外の、綿(コットン)や一般にウールと言われる羊などの糸を作る順番は、糸に紡績をした後に染(糸染め)を行うのが普通ですが。カシミヤの場合は、『わた』を染めた後に『紡績』します。これを、『わた染め・先染め・トップ染め』などと言います。
以前日本でカシミヤの混率表示誤りがあり新聞やテレビで大騒ぎになったことがあります。この事件はカシミヤを生業としているUTOとしても大問題です。ショックだったのは摘発されたのが有名百貨店や誰もが知っているセレクトショップだったことです。カシミヤは普通のウール等に比べて10倍位高価な原料なのでちょっとの混率の違いで大きく原価に影響するので混率を誤魔化してひと儲けしようとする輩が多いのです。
洗毛の部屋に入ると、湿気と獣の匂いでむせかえっていました。五十メートルもあろうかという洗毛機に投入されたカシミヤは何回も何回も洗浄されて、始めの頃は褐色の濁った水で見る影もない姿ですが、この時点ではあのふわふわのカシミヤという感じはまだしません。
放牧されているカシミヤですから毛には枯草や木の小枝やゴミなど一年分の汚れが付いています。この状態の毛は土毛と呼ばれていて、牧民から集められた土毛は六十キロもある大きな袋に詰められて選別場に運び込まれます。
カシミヤの『わた』は、カシミヤのうぶ毛のことです。カシミヤは太くて硬く長い剛毛に覆われていますが、その剛毛の内側にあの柔らかいうぶ毛が生えています。カシミヤのセーターになるのはこのうぶ毛です。そのうぶ毛の収穫は春5月ごろ。冬毛から夏毛に生え換わるカシミヤのうぶ毛を、熊手のようなもの(もちろん先は尖っていません)で梳き採ります。冬毛は自然に抜け落ちてしまうので落ちる前に人間が頂くのです。