風合もUTOのこだわり
2000年頃、繊研新聞で常務取締役をされていた阿部さんに聞いた話ですが、イタリアのスーツを作っているメーカーで、試着だけを仕事にしている人の話です。
毎日毎日スーツに袖を通して出来上がったスーツの着心地をチェックするんだそうです。
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風合は作られる
2000年頃、繊研新聞で常務取締役をされていた阿部さんに聞いた話ですが、イタリアのスーツを作っているメーカーで、試着だけを仕事にしている人の話です。
毎日毎日スーツに袖を通して出来上がったスーツの着心地をチェックするんだそうです。袖を通した途端に『チョットここが違うとか、不自然とか』服の出来具合が分かるそうです。そして、『今日は何事もなかった』というのが一番いい仕事が出来た良い日で満足感を覚えると言う話でした。数字や見た目には表れない着心地はとっても大事なことだと思います。
『私はヨーロッパのカシミヤの風合いが良い』とか、『イギリスのカシミヤがやっぱり一番』という人がいらっしゃいます。その人のお気に入りがヨーロッパのどこかのメーカーやイギリスのメーカーが作ったものだったんでしょうね。でもカシミヤセーターの製造工程を理解していたらヨーロッパとか日本とかの違いではなくブランドごとや品番ごとに風合いは違うということが解ると思います。
風合いの違いもデザインの違いと同じようにそのブランドがどんなこだわりをもってどんな風合いにするのも主張のひとつなんです。皆さんが店頭で手にしたときに、『如何にも柔らかくフンワリしているもの』や、『カシミヤの柔らかさは有るけどちょっとコシが強い』等々、慣れてくるとカシミヤにも色んな風合の商品があることを理解されると思います。
風合いの出し方にはいろんな方法がありますが大きなポイントはふたつです。それは編地の度目(どもく)と縮絨(しゅくじゅう)です。
UTOカシミヤは成長する
度目とはニットを編むとき緩く編んだりつめて編んだりする度合いのことです。粗めに編むことを度目(どもく)を甘くすると言います。粗く編むと、我々が目付けといっている、糸の量も少なめに上がりますし、度目を詰めて編むとしっかりした編地になりますが目付けも増えます。どの程度の度目で編むかはブランドとしての大事な主張のひとつです。
ふたつ目は縮絨(縮絨の話参考)です。粗く編んで強めに縮絨をするとそれこそふんわりになるし、つめて編んで弱めに縮絨すれば固めの風合いになります。風合いは柔らかければいいというものでもないし、硬すぎてもカシミヤの良さが発揮されないし、編地の度目と縮絨のバランスが重要なんです。
ユーティーオーのカシミヤセーターは長年愛用して戴きたく硬めです。
お手元のユーティーオーのカシミヤセーターは思ったよりフンワリ感がないと感じられるかもしれません。ユーティーオーでは、どっちらかというと、『編み立ての度目はつめ気味で、縮絨は浅め』です。天然素材で繊細なカシミヤは着用したり、洗濯をするうちにどうしても劣化は否めません。お気に入りのセーターほど着用頻度は高いものです。長く愛用してもらう為にユーティーオーのカシミヤセーターはつめ気味に編み込みしています。そして何度か着て戴いたり洗濯して戴くうちにより柔らかい風合いになります。想定として普通に着用してシーズン中3〜4回ぐらい手洗いして、3〜4年ぐらいたったころが一番風合いが良いんじゃないかと思います。いわゆる馴染んでくるはずです。もちろん着用の頻度や洗濯などの度合いでの違いがでますが。
ユーティーオーの商品の中に『天使シリーズ』という、カシミヤの風合いを最大限に生かしたロングセラーの商品があります。この商品は逆に通常の製品より度目を甘くするというよりゲージを下げてスカスカに編むことでとっても軽くて柔らかい編地を表現したものです。この羽毛のような軽さとふんわり感で天使という名前をつけてストールを展開しています。
着用していただいた皆さんから『想像以上の柔らかさで手放せなくなった』と好評です。これは編みと縮絨を逆手にとった成功例だと思っています。