染色堅牢度(せんしょくけんろうど)の話
服を製造したり販売するときに製造者、販売者として責任を持たなければならないことに堅牢度があります。主な堅牢度は3種類。耐光堅牢度、染色堅牢度、摩擦堅牢度です。
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色落ち
服を製造したり販売するときに製造者、販売者として責任を持たなければならないことに堅牢度があります。主な堅牢度は3種類。耐光堅牢度、染色堅牢度、摩擦堅牢度です。
堅牢度というとなんだか難しく聞こえますが、日光や紫外線による黄ばみや退色などの度合いが耐光堅牢度。洗濯などのときに色落ちしてしまう度合が染色堅牢度、そして擦れなどに対する摩擦堅牢度で、これらの度合いを1級から5級までに等級わけて判別しています。
洗濯して半絞りの状態でうっかり置きっぱなしにすると色がにじんだり他の洗濯物に色が移ってしまうことがあります。これは染色堅牢度が弱い典型的な例ですが、高価なカシミヤのセーターを洗ってそのままおきっぱなしというのもあまりないと思いますが、カシミヤでも色によって移りやすいのと移りにくいのがあります。
業界では『色が泣く』と言います。涙がにじむように色が移ってしまうからでしょう。なかなか面白い言葉ですが、ピッタリの表現だとおもいます。
染色堅牢度で一番気になるのはボーダーやインターシャなど同じ編地の中にいろんな色が混ざっている場合です。染色のベテランに方から、『昔はカシミヤのボーダーはよく色が泣いて泣かされたもんだよ』という話をききました。
しかし最近は染めの堅牢度のことでは日本製でのトラブルは殆ど聞かれません。染色堅牢度は日本ほど厳しいところはあまりないようです。
色落ちに厳しい日本
輸入品の中にはかなり堅牢度の低いものもありますので要注意です。ヨーロッパなどからの輸入された高級な有名ブランドでも染めの堅牢度に対してはかなり弱いのがあることは多くの人が知っていますね。
30年も前になりますが、友人とアメリカを1ヵ月ぐらい車で旅していたときのことです。旅の途中3日か4日に一度まとめてコインランドリーで洗濯していました。アメリカのちょっとした街ならどこにでもあるコインランドリーは、洗濯、ゆすぎ、柔軟、乾燥まで出来るとっても便利で重宝していました。
いつものように4日分の洗濯物を全部まとめてコインランドリーに放り込んで本を読みながらのんびりと洗濯が終わるのを待っていました。洗濯終了の合図で開けてびっくり、すべての洗濯物が赤いんです。そのときうっかりしてニューヨークの量販店で買った綿100%の赤いシャツも一緒に入れていたんです。この綿シャツの赤の染めの堅牢度が悪くて他の洗濯ものに移ったのは間違いありません。赤いのはこのシャツだけですから。でもシャツにはちゃんと洗濯可の表示があるんですよ。
下着からソックス、シャツ、コットンパンツまで赤く、まるで『林やペー』状態です。仕方ないので元凶の赤い綿のシャツを除いてもう一度洗濯しなおしです。少しは赤が落ちましたがそれでも殆どピンクでした。
日本ではこんなに色落ちするケースを体験することは全くなかったので、思いもかけないところで染色堅牢度がいかに大事かという事例を身を持って体験したできごとでした。
洗濯だけではなく、雨に濡れたり、汗をかいたりすることで他に色が移ってしまうのは大変な問題になりますので染めの堅牢度はとっても重要です。
こういうときはえてして安いものから高いものを汚染してしまうことが多いものですね。