カシミヤニットのカスタムオーダー UTO

【リンキング】ニットならではのナローパスの工程

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タートルネックなどのかぶりのセーターを着るとき、この小さな丸いネックの開きが布帛だったら絶対に頭が入らないだろうなと思うことはありませんか?

目次

    ニットならではのナローパスの工程

     タートルネックなどのかぶりのセーターを着るとき、この小さな丸いネックの開きが布帛だったら絶対に頭が入らないだろうなと思うことはありませんか?
     伸びるニットと伸びない布帛の大きな違いの一つですが、伸びない布帛ではネックの一部をカットして頭が入る状態にしてボタンやファスナーで閉じるようにしますね。
     一方、ニットのほうはそのままかぶってもネックが伸び、頭が入ったら縮まりますね。
     いつも無意識に行っている動作なので当然のことのようですが、それにはそれなりの仕掛けがあるのをお気づきでしょうか。
     そうです、ネックのゴム編みですね。このようなネックのパーツには伸び縮みさせるためにゴムのように最も伸び縮みするゴム編を使っています。しかしそのゴム編みも普通にミシンで縫い付けたら縫い目が固定してしまいますのでゴム地が伸び縮みしてもネックは広がりません。そこで登場するのがリンキングです。

     布帛の縫製は伸び縮みしない生地と伸び縮みしない生地をミシンで動かないように縫い付ける。一方ニットのリンキングは伸び縮みする編地どうしを繋ぎ合わせて伸び縮みする編地のようにする縫製の方法なんです。ニットの世界では縫い合わせることはリンキングすることが普通です。

     リンキングとは英語のリンクする、繋ぎ合わせると言う意味です。リンキングの方法は、ずらりと並んだリンキングマシンの針にドッキングさせる両方の編地を一本一本の針にひと目ひと目刺してつなぎ合わせるのですが、熟練のプロはいとも簡単に目を拾っていきますが、目落ちをさせないようにひと目ひと目刺すのはとっても大変です。大変に難しく熟練と経験が必要な熟練技です。

     このリンキングの作業は今のところは人間が一目一目拾って刺していくしか方法がないんです。残念ながらリンキングができる熟練者が高齢化してどんどん少なくなっているのが現状で、生産が海外に移って工場が閉鎖したり倒産したりして仕事自体が少なくなって仕事が途切れた機会に止めてしまう人も多いのです。

     編みは機械でできてもこのリンキングの工程を経ないと一枚のセーターは完成しません。
     熟練するのには多くの経験と根気が必要で、機械のように簡単に補充するというわけにはいきません。長年掛かって培われてきた技術が廃業や生産の海外移転で技術の伝承が途絶えたりすることはとっても残念です。日本の貴重な財産が失われていると思います。リンキングの技術は風前の灯なんです。

    わたしが書いています

    株式会社ユーティーオー宇土 寿和(うと としかず)

    宇土 寿和

    UTOの、宇土です。
    「ライブラリー」の記事で、ウールの宝石と言われるカシミヤニットの魅力や特徴を知っていただき、より多くカシミヤ製品を手にとっていただく機会が増えれば幸いです。