カシミヤニットのカスタムオーダー UTO

カシミヤより高価なウールがあるらしい

一般にウールの中で最も軽くて暖かいのはカシミヤ(カシミア)で、それは繊維の一本一本が細くて柔らかいからだとお話しましたが、厳密にはカシミヤの毛より細い繊維を持つ2種類の動物がいるんです。

目次

    ビキューナ

    その動物は南米アンデスの標高5000メートル以上の山岳地帯に住む『ビキューナ』というアルパカの仲間の動物です。写真や映像でしか見たことがありませんが、角が無い鹿の首を細くしてスマートにしたような可愛い姿で茶褐色をしています。毛は光沢があり世界最高の滑らかな手触りの繊維だそうです(触ったことがありますが、さすがに柔らかいです)。ちなみにビキューナの繊維の太さは10ミクロンから18ミクロンで、長さは20ミリから50ミリ。

    ビキューナ

    ビキューナは非常に臆病で家畜化できない希少な野生動物で、今ではワシントン条約で国際的に保護されているので毛も殆ど採れません。以前、ある有名デパートで数百万円のビキューナのスーツが売れたとか売れなかったとか言う噂を聞いたことがありますが真意のほどは分りません。

    この頃は極少量ですが、原住民であるインディオの人たちがペルー政府から特別に許可を受けて収穫をして製品にしているものもあるようですが、いづれにしても一般のビジネスにはなっていないのが現状で、簡単に手に入るものではありません。

    チルー

    もう一種類カシミヤより細い毛を持つ動物がいます。それは『チルー』という動物です。正式にはチベットアンテロープというカモシカの仲間で、細く長い角が特徴で一見トムソンガゼルのような姿です。生息地は中国の天山やチベット高原、インドのラダック地方の3250メートルから5500メートルの高知に住んでいます。

    チベットアンテロープ チルー

    このチルーのうぶ毛で作られるシャトーシュは毛織物で『ウールの王様』といわれ大きなショールでも指輪を通りぬけるといわれるぐらい滑らかでリングショールと言われています。インドでは何世紀もの間マハラジャなどの上流階級の結婚の持参品として珍重されていたそうですが、この毛を採取するにはチルーを殺して皮を剥いで採取するそうなんです。そのために20世紀初頭には100万頭ぐらいいたのが乱獲によって1995年には7万5000頭に激減して絶滅の危機にさらされているんです。現在はワシントン条約で動物の捕獲はもちろん製品の取引も禁止されています。

    チルーやビキューナは織物のみなので、要注意。

    2001年の毎日新聞に、『希少動物の毛皮販売容疑で逮捕・東京婦人服店代表ら』というニュースが載っています。 容疑者は逮捕の3ヶ月ほど前、渋谷区代官山の店でシャトーシュと呼ばれる高級ショール2枚を80万円で販売したワシントン条約違反容疑です。

    シャトーシュというショールは闇値で一枚40万円から150万円もするそうですが、希少で貴重といって購入する奴がいるから密猟が起こるんですよね。貧しい生活の上とはいえ密猟する奴が悪いに決まっています。しかしそれを買う人がいるから、しかも買う人は生活が苦しいからということも無く、ただ希少で他の人が持っていないという自己満足のためという偏狭な所有欲だと思います。消費者のモラルが問われる事件だと思います。

    ビキューナもチルーも製品は織物で、さすがにセーターは無いようですので、ニットの話しからはちょっと外れますが、カシミヤより凄い織物といわれると欲しくもなる気持も分らないでもでもありませんが、購入することも犯罪になりますし、貴重な地球の財産を危機に追いやることに加担することにもなるので、決して関与しないように注意しましょう。

    チルーはとっても俊敏で最高時速80キロで走ることが出来るそうです。この俊敏さと希少さで2010年の北京オリンピックのマスコットの一つにもなりました。走るマスコットの迎迎がこのチルーです。

    わたしが書いています

    株式会社ユーティーオー宇土 寿和(うと としかず)

    宇土 寿和

    UTOの、宇土です。
    「ライブラリー」の記事で、ウールの宝石と言われるカシミヤニットの魅力や特徴を知っていただき、より多くカシミヤ製品を手にとっていただく機会が増えれば幸いです。