品質表示のいろいろな事情
「カシミヤ100%」でも昔は「ウール100%」という表示だった?
日本のウールの品質表示について解説いたします。
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動物の毛は、みな「ウール」。
1980年頃のことです。カシミヤ(カシミア)のセーターを買っていただいたお客様から、タグに「ウール100%」と記入されているのをみて、「カシミヤ100%と思って買ったのにウール100%になってるけど」という質問を受けたことがありました。そういえばその頃は、下げタグや洗濯表示にはカシミヤ100%でも、素材表示としてはウールまたは毛100%と表示していました。日本では一般に羊毛のことをウールと呼んでいますので、これが誤解の元だったのだと思います。
ユーティーオーとしては、カシミヤ100%の高級素材を使っているので、「ウール」という表示では物足りないのです。そこで、当時、通商産業省に問い合わせたときには、どうしてもカシミヤを入れたかったら、あくまでも表示はウール100%として、その下に「ウールの割合、カシミヤ100%」とか「ウール100%(カシミヤ100%)」など、素材の種類を小さく入れて表示してもいよい、と言う返答で、あくまでもウールがメインで表示していた経験があります。
ファッション業界(衣料品)ではほとんど法律的な規制はありません。ブティックやニットメーカーをはじめるのに試験があるわけでもなし、免許や役所の許可が必要なこともありません。どんな服を作ろうが、どんな色を使おうが自由です。ただひとつ規制があるのが、1962年(昭和37年)に出された「家庭用品品質表示法」ぐらいで、洗濯方法の素材表示をしなさいというものです。
この家庭用品品質表示法の中での表示で、動物の毛が原料のものは「ウールまたは毛」と表示するようになっていました。ですからカシミヤでも羊でもアンゴラでもモヘヤでもアルパカでもみんな動物の毛ですから、「ウールまたは毛」という表示になるのです。
なぜ種類を分けず「ウール」という表示になったのか。それは、家庭用品品質表示法では主に「洗濯をする時に」どんな素材で作られているかを知らせるためだからです。素材によって洗い方が違いますし、洗えるか洗えないかということにもかかわってきます。ですから、使用している素材の中で原料が動物の毛なのか綿なのか麻、シルクなのか、はたまた合成繊維や化学繊維なのかがわかるように表示しなさいと言うことなのです。
「洗濯のため」の素材表示だから、動物の毛のものは、「ウールまたは毛」で情報は足ります。仕方ないと思っていたのですが、2000年(平成12年)の改正で、指定動物の種類はカシミヤ100%などと動物の種類を表示してよいということになりました。(それまでUTOではカシミアと表示していましたが、これを機にカシミヤに変更しました)。
カシミヤがメインのユーティーオーとしてはとても嬉しいことです。
植物性繊維にも、いろいろあります。
麻は植物の表皮を原料としていますが、熱帯地方の苧麻(ちょま)などの表皮をさらして糸にする「ラミー」と、ヨーロッパなどで産する一年草の亜麻(あま)からできる「リネン」の2種類があります。風合いも手触りもかなり違いますので、そのうちに麻素材では高価なリネンを使っている製品は、麻(リネン100%)と表示するようになるかもしれませんね。
綿の場合でも、産地によってもずいぶん違いますし、それぞれに特徴があります。エジプト綿、インド綿、ペルー綿、米綿、等々。そんな産地の中でも普通の木綿から繊維長の長い超長綿からそれこそピンからキリまであります。
それにしても動物の毛(ウール)をこんなに細かく分けたのは、動物の種類での扱い方の違いが微妙だからでしょうか。
洗いすぎちゃう日本人
余談ですが、日本人は一般的に洗いすぎるそうです。我が家も含め「着たら洗濯」という風潮がありますが、世界の常識では「汚れたら洗濯」。全然気にしてなかったことですが、そういわれれば着たら洗濯しなくちゃという気分になっていました。これは、お風呂に入る習慣にも近い感覚かもしれませんね。お風呂も、体の汚れを落とすというよりさっぱりしたいという気持ちもありますものね。でもあんなにお湯をいっぱいを使って毎日お風呂に入るというのは、世界から見たら決してメジャーではないですね。洗剤による環境問題のこともあるし、生地をいためることもあるので、洗いすぎには注意。