カシミヤニットのカスタムオーダー UTO

【カシミヤの『うぶ毛・わた』の話④】カシミヤの混率

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以前日本でカシミヤの混率表示誤りがあり新聞やテレビで大騒ぎになったことがあります。この事件はカシミヤを生業としているUTOとしても大問題です。ショックだったのは摘発されたのが有名百貨店や誰もが知っているセレクトショップだったことです。カシミヤは普通のウール等に比べて10倍位高価な原料なのでちょっとの混率の違いで大きく原価に影響するので混率を誤魔化してひと儲けしようとする輩が多いのです。

目次

    本当にカシミヤ100%ですか?

     以前日本でカシミヤの混率表示誤りがあり新聞やテレビで大騒ぎになったことがあります。この事件はカシミヤを生業としているUTOとしても大問題です。ショックだったのは摘発されたのが有名百貨店や誰もが知っているセレクトショップだったことです。
     カシミヤは普通のウール等に比べて10倍位高価な原料なのでちょっとの混率の違いで大きく原価に影響するので混率を誤魔化してひと儲けしようとする輩が多いのです。
     カシミヤの混率を誤魔化して仕入れを安くしても発覚した時のリスクを考えると全く割りに合わないのでこの事件は『引っかかった』個人的には思うのですが、この混率問題はなかなか無くなりません。
     それにしても、カシミヤ100%と謳った製品がウール50%、カシミヤ50%の商品でカシミヤが0%だったというこのケースは、毎日カシミヤを触っているものとしてあまりにもお粗末と思うのですが、サンプルは本物が来ていざ現物となると偽物が入ってくるという詐欺みたいなこともあるというのですから絶対に手を抜けません。

     ファッション業界は法律の規制が少ない業界で、お店やアパレルを開業するのに免許や登録がいることも無いし、どんな色の商品を作ろうがどんなデザインにしようが建築基準法のように規制があるわけでもありません。かなり自由な業界ですが、原料と洗濯と原産国の正しい表示は法律で義務づけられています。
     UTOはカシミヤが売りで99%の製品がカシミヤですから、もし混率問題でカシミヤが販売出来なくなったら即倒産で社員を路頭に迷わせることになってしまうので絶対に間違いは許されません。その為にも混率には神経を使いますが、一番のポイントは絶対に信頼できるところから原料を仕入れること、チェックを怠らないこと、甘い話に乗らないことだと確信しています。
     カシミヤの製品ができるまでにはたくさんの人や会社を経なければなりません。  
     カシミヤの原毛は日本では獲れないので紡績会社では輸入の度に自社や公の検査機関で原毛の混率を検査しています。もちろん輸出する方も途中で異物が入らないように何回も検査をして輸出します。異素材を混ぜるのは原毛のワタの時しか機会がありませんから。原毛の時点での検査が重要です。
    このように厳重に検査しても、原毛を縛っていた縄が切れてその縄の繊維が混入して99.9%などという検査結果が出ることもありますが、意図的以外で1%を超える異物混入ということはあり得ません。日本では不測の事態に備える為に法律ではカシミヤが97%までは100%の表示を認められていますが、ちゃんとしたルートなら3%もの異物が混入することはまず考えられません。

     通常、『ケケン』と呼ばれる毛製品検査協会は海外などから輸入された原料や製品が表示通りの製品が消費者に届くように、不当表示を食い止める機関です。自己防衛の為にもきちんと検査・証明してもらうことが重要です。
     以前、『カシミヤとニットの話』という本を書いたときにお世話になった検査官の木村さんに検査の現場を見せて頂いたことがありますが、顕微鏡で目視検査されているのを目の当たりにして『大変な仕事だなぁ』と思ったんですが、しかしこの検査。やってもらう方は結構お金がかかるんです。

    わたしが書いています

    株式会社ユーティーオー宇土 寿和(うと としかず)

    宇土 寿和

    UTOの、宇土です。
    「ライブラリー」の記事で、ウールの宝石と言われるカシミヤニットの魅力や特徴を知っていただき、より多くカシミヤ製品を手にとっていただく機会が増えれば幸いです。