UTO(株式会社ユーティーオー)

カシミヤ・ニットの毛玉対策

毛玉のことを業界ではピリングと呼んでいます。
『安いカシミヤ(カシミア)は毛玉が出来て、高いカシミヤは毛玉が出来ない』などと誤解している人もいらっしゃいますが、毛玉の出来るカシミヤと出来ないカシミヤがあるわけではありません。

目次

    毛玉のできる科学

    毛玉はいろんな要因によって発生するもので、人類が宇宙に行くほど科学は進歩しましたが、残念ながらそんな現代科学をもってしても『これが毛玉の原因で、こうすれば絶対に毛玉が出来ない』という決定的な原因や対処方は解明されていないんです。
    解明されている要因を一つ一つ抑えていくことで毛玉の発生を減少させるぐらいしか方法がないのが実情なんです。

    基本的にはカシミヤ(カシミア)に限らず通常のウール素材はすべて毛玉が起きます(もちろんカシミヤもウールです)。特殊な加工で毛玉が起きにくいようにしているのもあります。
    特殊な加工をしていない、本来の天然のカシミヤやウールなら状況によっては絶対に毛玉が出来てしまうんです。誤解を恐れずに言えば、『毛玉が出来るということは生きたウールの証し』ともいえます。
    大事なカシミヤですから、毛玉が出来るメカニズムを知って頂きその知識の基で着用してもらえると毛玉が出来にくく気持ちよく着ていただけるんではないかとおもいます。


    毛玉のできる原因

    どのようにして毛玉になっていくのでしょうか。
    毛玉になるには主に2つの要因があります。それは『摩擦』と『絡まる』です。
    毛玉が出来た状態とは、名前のごとく糸に撚り込まれていない部分の繊維同士が絡まって玉になっている状態です。本来はこの糸の撚りから出ている繊維の部分がふんわりと柔らかい肌触りになるんですが。

    毛玉の原因 1番は「ウールだから」

    JWIF(ジフ)、業界では一般に毛検(けけん)と呼ばれている第三者機関の毛製品検査協会でピリング試験を行う際には、コルク張りの箱の中で複数の編地を入れて一定の時(5時間)擦り合わせることでどのくらい起毛して毛玉が出来るかを、1級から5級までを等級として判定しています(数字が大きいほどピリングが起きにくい)。UTOの製品もピリング試験(ICI)では3級~4級で、(カシミヤは低い等級が出やすいのです)これは製品として全然問題ないという結果です。だからと言ってUTOのセーターは絶対に毛玉が出来ないということでは決してありません。
    毛製品を長時間擦っていると表面に擦られて出てきた繊維同士が絡まり初めやがて毛玉に成長します。この毛玉の誕生と成長の第一の要因がウール自身が元々持っている、『クリンプ』と呼ばれるウール繊維の特性にあります。

    天然のウールは(ウールは天然に決まってますが)繊維自体がカールしていてクルクルと丸まり易いという性質を持ってます。このクリンプがあるので糸を紡ぐ際にそんなにきつく撚りをかけなくても引っ張りに強いふんわりとした糸が出来るんです。
    自らクルクル丸まり空気を抱え込み保温性を高めることで外気から身を守る大事な大事な役目なんです。このクリンプも各々の動物によって特徴があり毛玉になりやすい種類となりにくい種類があるんです。

    世の中でよく使用されている獣毛繊維の種類と縮絨性
    (簡単に云うと、毛玉になりやすい順は)
    アンゴラ > ラム > カシミヤ > キャメル > モヘア > アルパカ
    これもあくまでも繊維の特性であり製品の作り方や着用の仕方でかなり変わります。
    獣毛の中ではアンゴラが一番毛玉になりやすくアルパカが比較的なりにくくカシミヤはその中間といったところです。
    毛玉になりにくいアルパカの繊維はストレート気味でクリンプがあまり無く毛玉になる前に抜け落ちてしまうケースが多いようです。

    カシミヤ山羊


    毛玉の原因 第2、第3の要因が「異物」と「静電気」

    毛玉が出来始める元のことをピル核と呼んでいますが、その切っ掛けの多くが異物や静電気です。異物と言っても目で見て目立つようなものだけではなく上着など他の繊維の切れたものや空気中に浮遊している埃のようなものが付着することでもピル核の原因になっています。また冬場に発生する静電気も繊維同士をくっつけますのでそれが元で絡まり始める場合もあります。


    毛玉の原因 第4と第5は「湿気」と「熱」です。

    この湿気と熱が大きなポイントなんですが、ピリング検査のように擦って起毛した繊維の絡まる速度が、常温で普通に摩擦した場合はだんだんと足し算のようにピルが成長するのに比べ、湿気や水を与えると掛け算のように急激にピルが成長しそこに熱、特に体温以上の熱が加わるとさらにピリングの速度が速まるという現象が起きるんです。

    長年カシミヤを扱ってきて実際に毛玉のクレームが起きたセーターを見てみると、着用時に湿気と熱が合わさったケースが殆どだからです。
    毛玉が発生している場所を調査するとダントツに多いのが脇の下です。
    極端な例として、一回のゴルフで脇の下やお腹周りに毛玉が出来てしまったということもあります。このケースではカシミヤのセーターの上にウインドブレーカーを着て一日ゴルフをしたと言うことです。セーターを着て運動することはごく普通の行為ですが、気密性の高いウインドブレーカーを着て運動すると汗をかいたりして蒸れ蒸れの状態になります。この状況で腕を振ったり、クラブを振ったりするとたちまち毛玉が出来てしまうことがあります。

    なぜ水分や湿気がこんなに影響するんでしょう。それは『ニットはなぜ縮む』でお話したのと同じ現象で、ウールの繊維一本一本の特性の『水の中や多湿ではキューティクルが開いて絡みやすくなる』ことが原因なんです。


    毛玉(ピリング)の出来にくい着方

    1. 摩擦を減らす

    着用するということはセーターにとっては摩擦されると言ってもいいでしょう。摩擦をなくすることは出来ませんが、なんといっても摩擦の度合いです。激しい作業での着用や何日も連続での着用は禁物です。ですから気に入ったセーターでも毎日は着てほしくない。1日着たら2日ぐらいは休ませてくださいね。特に男性は同じものを何日も続けて着る方もいらっしゃいます。要注意です。

    上着として着用しているときは自分の腕などの摩擦が主ですが、車などのウールのシートで背中が擦れて毛玉になったというケースもあります。
    案外気がつかないのがセーターの上に重ね着したときの上着です。裏地の無いツイードなどの上着などは厳禁ですよ。他にも帆布製品などのカバンで擦れてカバンのあたった部分だけが毛玉になることもあります。


    2. 異物と静電気対策

    毛玉が出来る元は繊維が自らからまるケースや異物や静電気で繊維同士がくっついて絡まり始めるなどがあります。異物と言っても目に見えるようなゴミというより繊維の切れ端などのような微小なものです。これらの毛玉の元を解消させるにはこまめなブラッシングが一番です。着用して仕舞う前にちょっとブラッシングするだけでずいぶん違います。
    絡まりそうになったピル核をほどいてやるんです。

    ブラッシング


    3. 湿気と温度対策

    ジャンパーの内側に着ていて車を運転してシートベルトで押さえられた部分が4~5日で毛玉になってしまったとか、ウインドブレーカーの中に着て一日ゴルフをやって腋の下が毛玉になってしまったというケースもあります。これらは連続の着用と蒸れて圧迫され擦れた典型的な例です。蒸れには要注意です。


    出来てしまった毛玉の処理方法

    毛玉のおすすめの取り方

    毛玉が出来たら引っ張らないで鋏みなどで切り取るのがベターです、気をつけないとセーターの本体まで切ってしまう恐れがあります(私も切って失敗したことがあります)。
    この頃は髭剃りみたいな手軽な毛玉取り機が発売されています。結構きれいに取れます。

    毛玉取り機

    毛玉を取ったらセーターが薄くなる?

    毛玉を取ったらセーターが薄くなるんではと心配される方もいらっしゃいますが毛玉を取る程度はセーターにとっては全く問題ありません。
    ウールのニットを販売される皆さんのお店でも一台は毛玉取り機を常備しておいて欲しいものです。

    その他の毛玉を取り除く方法

    毛玉の元は毛繊維の絡まりですので、絡まりを解くか取り除くことしかありません。

    絡まりを解くには櫛で梳いたり、毛足の堅いブラシでブラッシングをしてください。

    それでも取れない時には取り除きます。毛玉の状態によりますがプロの間でも皆さんそれぞれ秘策の道具をお持ちのようですが、食器洗いのスポンジ(堅い方)で取るという方が多いようです。カシミヤのように繊細な繊維はスポンジ(堅い方)で取れるでしょう。それより硬い毛は紙やすり(400番~600番ぐらいで取る方もいらっしゃいます。髭剃りのT型や一枚刃の髭剃りで慎重に取るという話を聴いたことがあります。素人では絶対に真似のできないテクニックでしょう。


    毛玉(ピリング)の出来ないカシミヤについて

    初めてこれを聞いたとき『ヘェー!そんなことが出来るんだ』と驚いたんですが、今はどっちかと言うと『なぁ~んだ』、という感じです。でも凄い技術です。

    科学加工を施した「防縮糸」

    これは顕微鏡で見るミクロの世界ですが、水や多湿の状況ではウールの繊維のキューティクルが開いて絡まりやすいという特性を持っているのはお話しましたが、このキューティクルを薬品で溶かして強制的に取り除くとかキューティクルを膜で包んでしまうというものでなんです。
    業界では『防縮糸』と言っていますが、近年大量に流通しているセーターなどはかなりの商品が防縮糸になってしまった感があります。

    本来はウールの繊維が呼吸することで多湿のときはサラッとして乾燥しているときはしっとりした着心地で気持ちが良いんですが、このウールならではの良さがなくなってしまいます。その代わりに少々強く洗っても縮みませんし毛玉も出来にくいんです

    素材としてウール100%、カシミヤ100%は間違いないですが、このような加工を施されたセーターの着心地は柔らかいけどなんとなくコシがなく感じます(私個人の見解)。
    つるんとしたウールはふんわり感がなく、去勢されたウールのようで頼りないので個人的にはあんまり好きではないのでUTOカシミヤには使う気はしません。
    でも普通のウール素材なんかで、多くの人により無難なザブザブ洗えるセーターを供給する時やはり防縮糸は便利だと思います。

    毛玉は最初の頃が出来やすい?

    カシミヤが好きで本業にまでしていますので冬場は殆どカシミヤのセーターです。それは一番のカシミヤの実体験でもあります。
    長年カシミヤを着用してきての経験ですが、カシミヤの毛玉は購入して最初の頃が最も出来やすく、出来る度に毛玉とり機で取り除いているとそのうちにだんだん出来なくなってくることが多くあります。全然毛玉にならないものもありますし、出来やすいものもあります。毛玉になりやすいものも一年目は出来る度にこまめに取っていると、2年目、3年目とだんだん出来なくなってきます。詳しい科学的な究明がなされていないので経験則でとしか言えませんが『そのうちに出来なくなるよ』なんて軽々にいえないのが残念です。

    わたしが書いています

    株式会社ユーティーオー宇土 寿和(うと としかず)

    宇土 寿和

    UTOの、宇土です。
    「ライブラリー」の記事で、ウールの宝石と言われるカシミヤニットの魅力や特徴を知っていただき、より多くカシミヤ製品を手にとっていただく機会が増えれば幸いです。