あの 紀ノ国屋
青山にあった「別世界」
骨董通りで会社を始めてから、もう36年になります。しかし、このあたりにはそれよりさらに昔、今から50年ほど前から縁があります。
大手旅行会社を退職し、小さな海外旅行の会社を立ち上げたのが1973年。場所は今の国連大学の裏手でした。
当時、国連大学のある場所には都バスの車庫があり、風向きによっては事務所の中に排気ガスの匂いがこもることもありました。
骨董通りが青山通りにぶつかる角には、今は「アオ(Ao)」というガラス張りのビルが建っていますが、かつてそこには青山で最も有名な食料品店がありました。世界中の珍しい食べ物が揃う 紀ノ国屋 です。現在はこのビルの地下で営業しています。
50年前、青山で一番知られていた場所は、断然この紀ノ国屋でした。全国の食品関係者が認める、まさに超高級食材店だったのです。
当時の紀ノ国屋は、庶民の私たちが足を踏み入れるのも恐れ多いような存在でした。
食品の輸入規制が厳しかった時代で、外国の食品はほとんど手に入りませんでした。そんな中、紀ノ国屋には世界中から珍しい食品が集まり、日本に赴任している外国人たちが懐かしい故郷の味を手に入れられる貴重な店でもありました。
日本人にはまだ珍しかったチーズや高価なワインがずらりと並ぶ光景を見て、
「世界にはこんな食べ物があるのか」と感心したものです。
日本で初めてセルフサービス方式を導入した店とも言われています。大きなカートがそのまま入りゆったりと上下するエレベーター。店の前には外交官たちの高級車が並び、その様子はまさに別世界でした。
その後、JR東日本の子会社となり売上も伸びたと思いますが、当時の紀ノ国屋は、売上規模が今ほどではなかったとしても、間違いなく別格の超高級食材店でした。
