４５年近くも前に宿泊した懐かしいホテルです。今はベストウエスタンホテルのメンバーになっているようですが、持ち帰ったホテルカードで確かめると住所が同じなので間違いないと思います。建物の写真を見るとほぼ変わらないのでずいぶんと古い建物ですね。正直まだあったんだと驚きです。

　１５人くらいのファッションツアーのグループで、ロンドン、パリ、ミラノと旅して最後がここローマでした。

　質実剛健の九州の田舎出の私はそれまでファッションとは全く縁がありませんでした。お客様と一緒に訪れたロンドン、パリ、ミラノの街の有名な高級ブティック巡りは大変なカルチャーショック。中でもセーター一枚が私の月収ぐらいのタグを見て、「よその世界だ！」と、驚きの連続でした。

　ローマでもお店のリサーチに同行させてもらいました。ローマのメイン通りのコンドッティ通りの突き当りはローマの休日で有名なスペイン広場です。私は映画の舞台に興味があったのですが、皆さんはスペイン広場の階段には殆ど興味を示さず手前の店に一斉に入りました。「ここがグッチだよ！」と言われても当時の私には全然わかりません。イタリアの国旗のようなグリーンと赤ラインのバッグは私にとってはそれこそ猫に小判状態でした。

　そんな奴がファッションツアーをやっていて、今ではカシミヤニットをやっているというのが不思議ですが、懐かしい想い出です。

　帰国前の１日が自由時間でした。各都市でずっと街中をリサーチして歩いていたので郊外を観光したいという希望に、以前私が訪れたことがある郊外のヴィラ・アドリアーナと噴水で有名なビラ・デ・エステを皆さんにお勧めしました。

　こんな時に頼りになるのがホテルのコンシェルジュです。

　カウンター前の威厳のある机に座っていて、ホテルを出入りするたびに愛相よく挨拶してくれるコンシェルジュに依頼したら、瞬く間に中型のバスと運転手さんを手配してくれ、コンシェルジュの実力を知りました。 

　アーチのついたギリシャ式の柱とプールのような池にギリシャ戦士の像が並ぶ世界遺産でもあるハドリアヌス帝のヴィラ・アドリアーナ。石の遺跡に艶やかな緑にピンクの見事な夾竹桃の花が印象的でした。そして、エステ家の別荘のチボリ公園は深い緑の森の中に数え切れないほどの噴水に、「観光もたまには良いね」という声に、「ファッション業界の人達は世界が違うんだなぁ」、と実感した経験でした。