山の上ホテル
今までこのホテルを旅するでは86軒のホテルを紹介させて頂きました。そのうちの13軒が日本のホテルですが、東京のホテルは初めてです。
リゾートホテル以外は全て旅行や仕事などの目的で泊まった処ですが、今回は泊まることが目的で泊まったホテルです。東京には泊まってみたいホテルが沢山あるのですが、東京に住むものとして自宅があるのにホテルに泊まるのはなんとなく憚られて今までは機会がありませんでした。
やっと長年の希望だった神田駿河台にある山の上ホテルに泊まることになりました。
山の上ホテルと言えば多くの作家が缶詰になることで有名なホテルですが、私にとってその作家は池波正太郎です。池波正太郎の時代小説が大好きで、殆どの作品は読んでいると思います。
池波正太郎は食通で通っている作家で、作品の中には食べ物の話がよく出てきます。食事の描写が抜群でいかにも美味しそうです。
30代の頃、エッセイに出てくる山の上ホテルの天婦羅を食べたくて昼食に行ったのが最初でした。貧乏人としてはもっぱら天丼ですが。以来何度か行きましたが訪れる度にこの小さなホテルに泊まってみたいと思っていました。
山の上ホテルは1954年に創業し、建物自体は神田駿河台に1937年に建てられました。建物の風格や落ち着いた内装で、私は勝手にクラシックホテルと位置づけしています。
チェックインして、一階から五階まで階段をゆっくり登って部屋へ。最初に、集めているホテルのロゴ入り封筒と便箋を探しますがありません。フロントで聞くとロゴ入り封筒と便箋は廃止して、代わりにもっと高級な紙専門店のレターセットを置いているということです。
「一番の目的がホテルロゴ入りの封筒と便箋なんです!」と粘ると奥の事務所から探してくれました。
山の上ホテルのロゴの素敵デザインです。それにしてもどうしてホテルを主張するレターセットを無くすんだろう。
この界隈は何度も来ている処ですが、今夜はここに泊まるので旅行者気分でホテルの周りを歩くことに。ニコライ堂はこの日はあいにく閉まっていたので聖橋へ。聖橋の上は中央線と総武線と丸ノ内線の往来を眺めた後、湯島聖堂へ。中山道を渡って神田明神。二時間ぐらいかけての散歩。家に帰らないと言うだけでいつもとは違う旅気分を味わえました。もちろん夕食はホテルで天婦羅でした。