カシミヤニットのカスタムオーダー UTO

蕎麦つゆ騒動

『野生のエルザ』というライオンと人間との愛情物語を書いたジョイ・アダムソン婦人を私達が招待したことがあります。
そして一週間、一緒に日本中をまわりました。40年も前で私が20代のころです。
 
来日したとき彼女は82歳。好奇心と元気いっぱいのおばあちゃんでした。もちろん当時はアフリカのケニアに住んでいましたが、動物保護のエルザ基金の普及の公演ために世界中を飛び回る国際人。
始めて訪れた日本に興味津々。東京・赤坂で通りかかった蕎麦屋さんで蕎麦打ちの実演を見て、『あれを食べたい』ということになり蕎麦屋さんに入りました。

待つこと数分。彼女は出て来たざる蕎麦の上から蕎麦つゆをかけようとしました。みんなビックリ!間一髪で回避出来たけど、アダムソンさんは『それ以外にどんな食べ方があるの?』。
そう言われれば、器に盛られた食べ物と汁が出てきたら飲むか、かけるしかないよな・・・。



御簾を上げて透けた容器に蕎麦が乗っているだけと知って唖然。私がまず食べて手本を見せます。 蕎麦猪口のおつゆにきざみネギとワサビを適量入れて、蕎麦を箸でつまんで、つゆの中に好みで浸けてすする。日本人としてはごく普通のお蕎麦の食べ方を披露します。
おつゆに蕎麦を浸ける量で味を調整することに『なんというグッド・アイディアなの』と感心することしきりです。そして私のすするのを真似るんですが、彼女はすすれないんです。
不自由な箸でやっと蕎麦をつまんで、蕎麦が口に入ってもポロポロ落ちるんです。すすれない人がいることを知って今度はこっちがビックリです。みんなが口笛のように唇を尖らせてスゥースゥーと教えるんですが、いざお蕎麦が口に入ると吸えないんです。

隣のテーブルの人達も面白がって見ていましたが、彼女のスゥースゥー、ポロポロにみんな大笑い。本人も大笑いで、とっても和やかなお昼になったんですが、『こんな難しい食べ方は初めて!』。『箸で食べるのは知っていたけど、これは世界で一番難しい食べ方だわ。出来ない人はいないのかしら?』・・・。
貴方もできる?と隣のテーブルの人に聞き、その人がうなずきながら、ズーと勢いよくすすると、オー!とおどけて見せます。

外国人に言われて改めて気づいた日本の不思議さ、面白さでした。  うと

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