奈良ホテル 奈良・奈良
『日本を代表するホテルは何処ですか?』
こんな質問が大げさならば、『貴方の親しい外国からのお客様が日本にやってきたら、どのホテルに泊めてあげたいか、ひとつだけ上げてください』と言われたら、どのホテルを勧めますか?私なら奈良ホテルと答えます。
日本を代表する古都、奈良にあるということもありますが、日本独特の伝統的スタイルの建物や内装を整えた日本を代表するホテルだと思います。
1909(明治42)年創業。約一世紀前に日本の西の迎賓館として建てられた総ヒノキ造り2階建てのクラシックホテルです。外国人から見たら日本の伝統的な建物のシャトーホテル?と映るんではないでしょうか?
奈良の歴史的な建物との調和を一番に考えた色調やデザイン、特に屋根の美しさは出色です。そういえば東大寺、唐招提寺なども屋根の美しさが特徴のような気がします。
位置的にも東大寺や春日大社のある広大な奈良公園のすぐ近くにあるので、歴史の中にタイムスリップしたような錯覚を覚えるぐらい歴史的環境にしっくり溶け込んでいます。古さからは7・8世紀の東大寺や唐招提寺には比較にはなりませんが、100年前に建てられたこのホテルは既に古都奈良の歴史的建造物として存在していて、まさに奈良ホテルは『日本の古都奈良を表現しているホテルだなぁ』と思います。
『野生のエルザ』という、ライオンと人間の生活を書いたジョイアダムソン婦人を日本に招き、一緒に日本を旅行した時に京都・奈良を訪れることになり、是非泊まってもらいたいと予約したのが、京都は日本旅館の俵屋で、奈良はこの奈良ホテルでした。婦人といっても当時80歳になる何にでも興味をもつお茶目でチャーミングなおばあちゃんでした。1975年のことです。
あの時以来、久しぶりに奈良ホテルに泊まりました。『お変わりなく』という感じで変わっていないのが何より嬉しくなりました。泊まった翌日の早朝、観光客が来る前の奈良公園の散歩が最高でした。東大寺の壮大な南大門をくぐり、大仏殿の本堂の外から大仏様を拝んで二月堂への道を登ります。樫の常緑が茂る穏やかな登り道。大仏殿の鐘楼に立ち寄って、三月堂と呼ばれる法華堂、二月堂への緩い階段を上ってゆくとお水取りの映像で見なれた二月堂が現れます。
二月堂の回廊からの眺めが素晴らしい。『どうぞごゆっくり』と言わんばかりに長椅子が置かれ、朝霞の中に大仏殿の甍とシビが輝いている様は、思わずオォーと声が出るぐらい美しい。