フリピンプラザ ホテル マニラ・フィリピン
このホテルにチェックインした時、『やっとたどり着いた!』と心底から安堵した印象深いホテルです。
本来は五日間このホテルに滞在する予定だったのにチェックインできたのは予定より三日遅れ、四泊五日のツアーの最終日前日。このホテルに泊まれるまでが大変でした。
今から三十年以上も前の話。二十人ぐらいの社員旅行の添乗です。
羽田を出発する時、現地フィリピンを手配するエージェントの担当者が珍しく見送りに来てくれました。
殊勝なことだと思っていると、搭乗直前に彼がとんでもないことを耳打ちしたんです。「実はマニラのホテルが最終日しか取れていないんです」。エエッ!?!?と寝耳に水の話で絶句ですが、メンバーはこれから始まる南国の休日にワクワク、一方添乗員の僕は顔を引きつらせながらマニラへ向け離陸しました。
ひどい話で現地のミスといって最終はこっちの責任です。ホテルが取れていないのは確かです。事情を説明しお客様が市内観光しているうちにマニラ中を走り回ってマニラの下町のいかにもみすぼらしいホテルを確保。普通ならこの地区には観光客は足を絶対に踏み入れないように注意するところです。とにかく各部屋に伺って誠意を尽くしてお詫びし事情を説明し了解を戴くことが出来、一日目はどうやら終りました。
二日目、ここから出ないと不満爆発は確実です。こうなったら旅行の予定は有ってないようなものですから滞在型からホテルを探しながら観光するツアーに変更です。お客様の『其のほうが良い、宇土さんに任せます!』と決まりました。
一応今日の予定はマニラ郊外のタガイタイでタール火山を観光ですから、其の近くで何とか探せないものかと走り回ります。ここにはタールビスタロッヂという火口湖を見下ろす絶好のロケーションに老舗のホテルがあります。
早速マネージャーに頼み込みますが勿論このホテルも満室です。しかし老舗ホテルのマネージャーはこのあたりのリーダー的な存在のはずと目星をつけ、ずうずうしくも彼を通じて何とか協力してもらうように強引に頼み込みました。『うちに泊まりに来たお客さんが困っている』これが最初からのねらい。
僕の執念と 結構な額のチップが好を奏してやっと一軒のホテルを確保できました。ブラボー! やはり彼は実力があると見込みもう一押し、明日のホテルも探してと頼み込みます。図々しいにも程があると自分でも思いますが、今は彼しか頼る人はいません。
粘ること二時間、ついに彼が見つけたのが美しい緑のゴルフコースの中に点在するコテージ。ここは大正解で皆大満足。おまけにゴルフ好きの人達で急遽ゴルフコンペもできました。
マニラ湾に面し、有名な夕日を一望に望む絶好のロケーションと近代的な設備の超一流ホテル。
長い三泊の旅をを経てたどり着いたのがこのフィリピン・プラザホテルです。『ご苦労さん、最初はどうなるかと思ったけどかえって良い旅行が出来てみんな喜んでるよ。ここへ着いたからにはもう心配は要らないだろうから宇土さんもゆっくりしてください』と言って戴いた時、旅行屋冥利を感じました。そう、何事もないときには添乗員は要らないんですよね。