1998.6 ルノワル ユースホステル
* カシミアおやじのたわごと *
人それぞれの人生で、忘れ得ない大きな影響を受けることがあると思います。時間の長い短いではなく、インスピレーションとか、カルチャーショックに近いものです。
九州の福岡に柳川という古い街があります。
柳川は立花藩十五万石の城下町で、街中にたくさんの掘割が残る水郷の街で北原白秋が生まれた街です。その柳川の東に瀬高という小さな街があります。有明海にそそぐ矢部川が流れるのどかな筑後平野の中の普通の街です。
ここに、ルノワルと言うフランスの有名な画家の名前の付いた、古い民家風のユースホステルがります。
高校時代、仲間3人で自転車で九州一周をやった時、田舎の島原を出発して最初に泊まったのが、このルノワル ユースホステルでした。
この頃は少なくなってしまったようですが、当時は学生の旅行と云えばユースか野宿の貧乏旅行でした。
田舎の高校生にとって、ここは東京を始め多くの大学生が集まり、都会のワクワクするような雰囲気を持った処でした。
ここのオーナーが古賀さん夫妻。古賀さんと呼んだことは一度もなく、父さん母さんと呼ばせてもらう、私の人生で最も大きな影響を与えて頂いたご夫婦です。
初めて訪れた時が、このユースがオープンして間もなくで、大学生の宿泊者が多い中で自転車で来た高校生と言うことで印象が深かったんでしょうか。以来、九州に帰るたびに泊めてもらい、これから遭遇するであろう社会に対しての指針や、人生や愛、友情、優しさ、自然、等々。夜遅くまで、学校では学べない多くのことを教えて貰ったり、相談に乗ってもらいました。
あの時があったから、今の自分があると心底感謝しています。
そんな父さんは、ユース開所5年で急逝されてしまいました。以来、母さんと娘の朱美ちゃん夫婦が頑張ってユースを守り、異色のユースとしてたくさんの人から慕われています。
そんなルノワルも時代の流れで、この頃はめっきり宿泊者が減り、経営的には厳しいそうです。
「可愛い子には旅をさせろ」のごとく、皆さんの子供さんに、若い時にしか出来ない簡素でちょっと勇気の要る、自分を見つめる社会との出会い旅をさせてあげてください。そして九州に行かれたらルノワルに泊まらせてください。
忘れていた、何か大切なものを思い起こさせてくれる貴重なユースですから。