1999.1 どんな景気回復を目指すのだろう
* カシミアおやじのたわごと *
学校で教わる歴史は遠い昔の出来事。自分とは関係ないことと思っていました。
18世紀末イギリスで始まった産業革命。その主産業のひとつが繊維産業でした。繊維産業の根本は人が糸を紡ぐ事が出来るほどの単純作業。それをいち早く機械化し大量生産し大英帝国の礎を作ったのもこの繊維産業でしたね。
大量生産という概念がなかった時代ですから、大量に効率よくモノを作る事は大変なメリットでした。これを世界中に輸出してイギリスは莫大な富を築きました。
しかし、この繊維産業は機械さえあればそんなに高度なノウハウではないので、間もなく工業化が進んだアメリカに持って行かれてしまいました。第二次世界大戦までは、安い南米や黒人労働者を使って、アメリカは繊維産業の中心でした。
戦後はその繊維産業をごっそり日本が奪い、世界中に供給する巨大な繊維輸出国になり、繊維産業は日本の発展の切っ掛けを作りました。
日本が豊かになり賃金が高くなりだすと、今度はアジアに向けて移動し始めました。始めは韓国、台湾。続いて香港。そしてインドネシア、中国、ベトナムへ。労働集約的産業は安い労働力を求めて移って行くのが当然の経済原則です。
繊維業界は、原料を調達して輸入する商社、糸に紡ぐ紡績、織る紡織、染色、加工場。
我がニットの場合は糸から、染色、編み立て、縫製リンキング・・・・。多くの人たちが携わる産業です。もちろんデザインや企画をするアパレル。そしてお店。大騒ぎになるはずです。これだけの人達が携わり影響を受けるんですから。
イギリスもアメリカも、移られた方は不景気になり社会的な問題になりました。今の日本も移られている真っ只中。繊維産業だけでなく他の産業も同じく、産業構造の変化が不景気の大きな要因の一つでしょう。
そんな状況に、将来から借金までして政府は景気浮揚策の大型予算を組んでどうするんだろう。時代と産業構造を元に戻すつもりでしょうか?
変わらざるを得ない、どう変わるかを問われている時に、今までの業界や産業に予算をつぎ込もうとしているようにしか思えません。
将来、日本人の生活を支えてくれる産業は今までの産業ではない事は皆知っているはずなのに。予算を使わず、規制緩和などでチャンスを広げたほうが良いのではないかと思うのですが。それとも、政府はこれだけやっても駄目だったんだから、と逃げるんでしょうか?