カシミヤニットのカスタムオーダー UTO

2016.11 ニットのお直し

* カシミアおやじのたわごと *

 ニットの編地はループのつながりですから一箇所でも目落ちしたりほつれたりするとそこから傷がどんどん広がってしまいます。それ以上傷を広げない為にも出来るだけ早く対応することが大事です。でも、セーターのお直しは素人では難しく、プロでもとっても時間がかかります。傷の具合によっては新しく編みなおしたほうがずっと簡単ということもあります。でもカシミヤは原料の糸が高価なのでそんなに簡単に編みなおすことも出来ないのが辛いところです。

  カシミヤのオーダーを始めて間もない頃、お店のお客様が昨年UTOで作ったセーターを引っ掛けて穴が空いてしまったのでお直しをして欲しいという依頼がお店からありました。すぐに対応してそのセーターを編んだ職人さんがすぐに直してくれました。お直しの料金を聞くと『小さい傷だし、今は暇なときだから、いらないよ』ということでした。無料は大変申し訳ないと思ったんですが、自分が編んだセーターに対する愛情で、『無料でいいよ』と言ってくれているんだなと理解していたのでお店にも『無料です!』とお伝えしました。

  翌年のことですが、そのお店から違うお直しの依頼がありました。職人さんに傷を見てもらって『お直し料金として1500円かかります』とお伝えしたら、『昨年は無料だったのに』と、かなり立腹の様子です。『昨年の時は職人さんも暇なときで、簡単な傷だったので無料でサービスさせていただいたんですが』と弁解しても、『去年は無料だったのに、不親切ね!』。『そもそも自分のところで作ったセーターをお直しするぐらいは無料が当たりまえでしょ!高いカシミヤなんだから!』、ガチャ!と電話は切れました。

  サービスって本当に難しいですね。最初にお直ししたとき、『今回は特別に無料です』と気が回らなかったが誤解の元だったと反省しましたが、私としては着用後のお直しは有料がお当たり前で、無料はこちらの好意と勝手に思っていたんですが。お直しは無料が当たり前と思っている人もいることを改めて認識しました。

 弊社のミスで発生した傷はもちろん無料で当社がお直しするのが当然ですが、着用後の傷は原則お客様の負担でお直しをお受けしています。

  また、傷の大きさに対する認識も違う時があります。小さい傷はひと目かふた目ぐらいのことですが、電話では小さい傷と話をしたのに届いたセーターを見ると親指ぐらいの傷だったりします。これぐらいになると我々は大きな傷で、傷が目立たないように治すのはとても難しい部類です。人の感覚の違いも難しいものだと思います。

 また小さくても虫食い等の場合で何箇所も空いていることがよくあります。3箇所空いているからといわれて詳しく見ると5箇所も6箇所も食べられているときがあります。時には、まだ穴にはなっていなくて今にも穴が開きそうになっているケースもあります。そんな時は黙って補強するようにしています。

 また、編地や場所によってお直しの難度は大いに変わります、天竺のところは比較的お直ししやすいですが、リブや寄せ柄などはとっても難しく、残念ながらお直し不可能で補強だけしてお返しするというケースもあります。

  お直しの原則は編んだ職人さんにお願いすることにしていますが、ニットのお直しの順序は、(何処でも同じでしょうが)ニットを送って頂き(送料は依頼者負担)、職人さんに傷を見てもらって、お直しが可能か、そして料金と時間を見積もってもらいます。

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