カシミヤニットのカスタムオーダー UTO

1998.4 亡き父さんへ  

* カシミアおやじのたわごと *

  3月18日、鬼籍に入ってしまった父さん。

突然のことでまだ気持ちの整理がつきません。

長い間ご無沙汰で顔も見ていなかった。

親は空気や健康みたいに、あって当然という甘えもあり、亡くして事の重大さに気付く浅はかさぶりです。

以前は、『父さん元気かな』と、時々思い出すぐらいだったけど、今はちょっと時間が空くと父さんが亡いということがなぜか頭に浮かんできます。

最近は孫の成長に目を細める、限りなく優しく、真に欲のない人だった。

そんな父さんは、戦前中国の長江のほとりの重慶という街で大きな仕事をやっていたらしい。でも日本の敗戦で、すべての財産を無くして日本に引き揚げて来て、帰国後ゼロからの再出発、引揚者と云う肩身の狭さ、子供を6人も育て上げることの厳しさは僕の想像以上だったに違いありません。

 上京して貧乏会社をやっている僕ですが、母さんから『あんたの事をいつも父さんが心配しているから』と聞くと、戦後の父さんの頑張りと苦しみを聞き知っていた自分としては、『自分の会社が苦しい』なんて絶対に言えなかった。『父さんの苦しみに比べたら』といつも思っていましたから。

少しでも苦しいと聞いたら、なんとかしてあげたい。なんとも出来なかったら、その出来ないことでジレンマに落ち込む父さんのことは僕がよく知っています。

 父さんから電話がくると、いつも背筋を伸ばして緊張して話している僕を見てカミさんが笑っていました。怖くはないけど、怒られるはずもないけど、父さんにはすべてを見透かされているような気分でした。

荼毘の時姉さんが、『父さんの子供で幸せでした、本当にありがとう』と、云ってたけど、僕も心からそう思います。そして一番の自慢は、父さんと母さんが仲が良かったこと。いつも母さんのことを褒め、感謝して大事にしていたね。

僕も見習います。

あとは、その母さんに元気でいてほしいと願うだけです。

母さんを見守ってください。そして安らかに眠ってください。        

合掌。

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