1999.8 カシミアへのこだわり
* カシミアおやじのたわごと *
5~6年前から、大変お手軽な値段のカシミヤが出回っていて、『同じカシミヤなのにどうしてそんなに値段が違うの?』と度々聞かれます。素朴な疑問だと思います。
常々カシミヤに馴染みがあり本当のカシミヤを知っている人は触ったら気づくと思いますが、馴染みのない人はどう違うのかあまり分からないと思います。それは格安のカシミヤでも、カシミヤ自体が他の素材に比べて抜群に柔らかく、かるく、暖かいという優れた着心地から、なかなか判別しにくいでしょう。
そんな質問に、こんな例で説明します。
あらかじめ大量に作り込んで、さっと湯通しして素早くお客様に出す、立ち食い蕎麦。安くて、忙しい仕事の合間では便利で有難い存在ですね。
一方、熟練の職人が、蕎麦粉を吟味して、水にこだわり、おつゆにこだわり、心を込めて打つ蕎麦。値段は張りますが、心尽くしの気持ちと微妙な味が至福にしてくれます。どちらも本物の蕎麦粉100パーセントなら数字上の違いはありません。しかしこの違いがUTOと巷のカシミヤとの違いだと思っています。カシミヤの原料にもピンからキリまであります。どちらを選ぶか?選ぶのは買う人の判断でしょう。
カシミヤの魅力は独特の柔らかい肌触りですね。
その柔らかさはどこから来るのかご存知ですか?
それは、カシミヤが他の動物毛より『繊維が細い』からです。実はカシミヤよりもっと細い毛を持つビキューナと言う動物が南米のアンデスの高地に居るんですが、ビキューナはワシントン条約の絶滅の恐れのある動物として毛を採取することは出来ません。ペルー政府が一部のインディオ達に特別に許可しているようですが、勿論商業ベースにもなりませんから今のところカシミヤは地球上でもっとも細い毛を持つ動物なんです。
ちなみにカシミヤはカシミヤゴートという山羊なんです。現在カシミヤの産地は、中国、モンゴル共和国、アフガニスタン、ウズベキスタンなどの中央アジアの高地に生息しています。冬は零下40度以下の極寒、夏は40度をこすという猛暑という厳しい気候の処に住んでいます。
昔、ヨーロッパ人がこのカシミヤ山羊を大量に飼育しようとして、ヨーロッパに連れて行って育てたことがあるそうです。しかし原産地よりずっと穏やかなヨーロッパでは細くて柔らかくて暖かい産毛は殆ど生えてこなかったそうです。あの軽くて柔らかく暖かい毛は、厳しい自然から身を守る為に神様が与えてくれたものでしょう。
カシミヤは知れば知るほど愛おしく、嵌りこんでしまいます。