カシミヤニットのカスタムオーダー UTO

2009.2 本当にカシミヤ100%ですか?

* カシミヤおやじのたわごと *

カシミヤの混率証明書をお願いします 

 2008年秋のシーズン初め、カシミヤの混率表示誤りがあり新聞やテレビで大騒ぎになりましたね。この事件はカシミヤを生業としているUTOとしても大問題です。ショックだったのは伊勢丹やユナイティッドアローズという誰もが知っている大企業だったことです。      

 カシミヤは普通のウール等に比べて10倍位高価な原料なのでちょっとの混率の違いで大きく原価に影響するので混率を誤魔化してひと儲けしようとする輩が多いのです。

 カシミヤの混率を誤魔化して仕入れを安くしても発覚した時のリスクを考えると全く割りに合わないので今回の事件は『引っかかった』と思うんですが。この混率問題はなかなか無くなりません。 

   それにしても、ウール50%、カシミヤ50%の商品でカシミヤが0%だったという今回のケースは、毎日カシミヤを触っているものとしてあまりにもお粗末と思うんですが、サンプルは本物が来ていざ現物となると偽物が入ってくるという詐欺みたいなこともあるというのですから絶対に手を抜けません。   

 ファッション業界は法律の規制が少ない業界で、お店やアパレルを開業するのに免許や登録がいることも無いし、どんな色の商品を作ろうがどんなデザインにしようが建築基準法のように規制があるわけでもありません。かなり自由な業界ですが、原料と洗濯と原産国の正しい表示は法律で義務づけられています。          

 UTOはカシミヤがうりでほとんどの製品がカシミヤですから、もし混率問題でカシミヤが販売出来なくなったら即倒産で社員を路頭に迷わせることになってしまうので絶対に間違いは許されません。その為にも混率には神経を使いますが、一番のポイントは絶対に信頼できる先から原料を仕入れること、甘い話に乗らないことだと確信しています。   

 カシミヤの製品ができるまでにはたくさんの人や会社を経なければなりません。            カシミヤの原毛は日本では獲れないので紡績会社では輸入の度に自社や公の検査機関で原毛の混率を検査をしています。もちろん輸出する方も途中で異物が入らないように検査をして輸出します。異素材を混ぜるのは原毛のワタの時しか機会がありませんから。原毛の時点での検査が重要です。   

 このように厳重に検査しても、原毛を縛っていた縄が切れてその縄の繊維が混入して99.9%などという検査結果が出ることもありますが、意図的以外で1%を超える異物混入ということはあり得ません。不測の事態に備える為に法律ではカシミヤが97%までは100%の表示を認められていますが、ちゃんとしたルートなら3%もの異物が混入することはまず考えられません。          

 UTOでは、三越さんの日本橋本店で受注会を。又、昨年からカシミヤの最高峰といわれる中国内モンゴルの阿拉善(アラシャン)で獲れたカシミヤを展開させて頂いています。これを開発するために三越商品本部の松本バイヤーと内モンゴルの現地まで行ってカシミヤ牧民の杜さんや紡績会社を訪ねトレーサビリティを確認した商品ですが、それでも糸が日本に届いた時点で輸入元のリシンドーさんから毛検査協会で検査してもらい証明書をだしてもらうという念のいれようでした。          

 通常、『ケケン』と呼ばれる毛製品検査協会は海外などから輸入された原料や製品が表示通りの製品が消費者に届くように、不当表示を食い止める機関です。自己防衛の為にもきちんと検査・証明してもらうことが重要です。

 以前、『カシミヤとニットの話』という本を書いたときにお世話になった検査官の木村さんに検査の現場を見せて頂いたことがありますが、顕微鏡で目視で検査されているのを目の当たりにして『大変な仕事だなぁ』と思ったんですが、しかしこの検査。やってもらう方は結構お金がかかるんです。          

 日本一厳しいといわれる三越さんの売り場に商品が出るには、カシミヤを含んでいる商品はすべて検査を受けて証明書を提出しますので、一品番ごとに証明を受けます。その証明を受ける為には実際の製品を切って検査してもらうしかないので、高価なカシミヤを切るときは情けなくなってしまいます。

 売り物にならなくなった高価なカシミヤ一型ごとの製品代金と、証明書代金でかなりの金額になってします。『頑張って販売しないと!』です。             

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