2014.11 珍しい下戸の話
*カシミアおやじのたわごと*
最初の人類といわれる、ピテカントロプス・エレクトスはジャワ原人。北京原人はホモ・エレクトス・ペキネンシス、等々。人類起源の諸説は色々あるそうですが、サケ・ノメントロプス・ゲコネンシスを知っていますか?
『聴いたことない!』。そうでしょうね、僕が作った言葉ですから。
この人種は酒をはじめとするアルコールを分解する酵素を持っていない、世界でもアジア人種の中の一部の珍しい人種だそうです。
特異体質というか、アルコールが体内に入ると心臓がドクドクし、頭がガンガンします。世界中で愛飲されている飲み物を飲めないというのはとても厄介ですが、こういう持病を持っているという諦めがあり、自分自身で納得しています。 これまでの人生で酒にまつわる数々のエピソードがありました。
結婚して初めてのお正月に、カミさんの実家でお猪口一杯のお屠蘇を飲んで寝てしまった婿に、医者でお酒大好きの義父が私に聴診器を当てながら『学術的にも珍しいよ』と言いながらがっかりしていました。
義父は娘の夫を相手に飲めることを大いに期待していたようですが、これだけはどうしようもありません。危険なことは医者である義父が一番知っていましたから。
添乗員をやっていた1970年代、ヨーロッパへはアラスカのアンカレッヂ経由の便がメインでした。日本航空はヨーロッパからの帰りの便にサービスとして日本の味のお蕎麦をアンカレッヂ・東京間で出していてとても好評でした。
20名ぐらいのグループでパリからアンカレッヂ経由で帰ったフライトで、そのお蕎麦が出てきました。みんな久しぶりの日本の味に大喜びでした。もちろん私も食べましたが、しばらくすると顔が熱くなり、心臓がドクドクします。『あ、これはお酒が入っていたな』と気づきましたが、なんとなく眠くなり、寝てしまいました。
周りにいたツアーのメンバーが赤い顔で寝ている様子を見て、『宇土さんは具合が悪そうだ』と心配してくれてスチュアーデスを呼んだそうです。彼女も驚いて、すぐに機内アナウンスで『機内にドクターはいらっしゃいませんか?』とやってくれたそうです。
肩を叩かれて目が覚めたら、男の人が、『大丈夫ですか?』と聞くので私は、『はぁ?』という感じでした。
たまに、機内で急病の人が出て、『ドクターいらっしゃいませんか?』というアナウンスに、お出ましになる人に『かっこいいな!』と思うことはよくあったんですが、自分がその患者になるとは思いもよらない経験でした。
結局、なんてことはない、おつゆに入っている味醂のアルコールが飛んでいなかっただけの話でしたが、『味醂で反応するなんて』と、呆れられたり感心されたりの顛末でした。