カシミヤニットのカスタムオーダー UTO

1993.4 零から壱へ

* カシミアおやじのたわごと *

 創業二年目にはいり、やることなすことが会社として初めての事ばかりです。予定が立たず段取りが掴めず、ウロウロ、アタフタ。あっという間に一週間が終わってしまいます。厳しい中にも、モノ作りの楽しさもあります。そんなニット屋アパレルの悪戦苦闘ぶりを紹介させて頂きます。

 

まずは糸。どんなニットを作るかは、どんな糸を使うかが重要な決め手です。安い糸を使って高く見せたりというようなハイテクニックは持ち合わせていませんし、ましてや小社は無地ライクな企画が多いので、この糸を決めるのが最初のハイライトなのです。

 

素材展を見たり、糸商さんに糸見本を見せてもらったりしながら捜して行きます。捜すと言っても半年も前から全部のデザインが決まっているわけではなく漠とした中で糸選びをしているわけですから。それに糸を見てデザインヒントを得ることも多いのです。だから、なかなかこれと言う決定打が無く、結局、「宇土さんの欲しいのはこれでしょう」となるのが殆どなのです。マア、相手は長年やっている糸のプロなんですから仕方ないですけど、頼もしい味方です。たまには「どこの紡績で作っている、何々素材の何番手、こんな具合にコーンアップして何キロ!」と言ってみたいのですが。(向こうも言われてみたいと思っているでしょうが) 

* * 

次にすぐ、「ジャア、何色で?」とくるんです。「やっと糸を決めたばかりなのに」と思っていても先方は生糸(ナマイト)を工場に送るわけにはいかないんですから、当然、「何色で?」となるんです。それに染工場はたびたび一杯になり、時には順番待ちで、一、二ヶ月も余分にかかってしまう時があるので、早め早めに染めないといけないのです。

シーズン中に使う大体の色目(三十色)ぐらいは、ビーカーして色データを取っておかないいとけないのです。一回で染めたらそれこそパニックになるのです。でも、この色を決めるのが大変なのです。人間の色を見分ける能力は二万色以上と言われるぐらいですから。その中から、たった三十色を絞り込むんです。しかもこっちは凡才と来てるんですから時間がかかるんです。迷い始めたら、終わりのないゲームに嵌りこんだようで頭が痛くなってきます。

 * * * 

ここでぐずぐずしていたら、工場さんから「何ゲージの機械を使いますか?」、「デザイン指示書が届きません」、「糸はまだですか?」等々。と、もう次のひとに迷惑をかけているんです。一難去ってまた一難。(こんなにしてもらっているのに、難と思っているのですからバチが当たりますよね)

 まず、ファーストサンプルを作ってもらいます。アパレルは工場さんの腕が財産です。幸いにも、不況ゆえに、小社みたいな弱小新規でも、良い工場さんに作ってもらえるので、不況バンザイです。何が幸いするか分かりません。ファーストサンプルが上がり次第チェック、修正、ボタン、タグ、洗濯ネーム、品番、色番。やっと各色サンプルになったと思ったらもう展示会は迫っています。 

* * * * 

展示会の案内状、絵型表、受注書、等々と、今度は営業マンに早変わり。よくこんなんでメーカーやっているなと、自分でも思うのですが、もうお分かりのようにプロである相手の方々に支えられてやっているだけなんです。手を合わせて感謝しています。 その後も、現物生産の打ち合わせ、納期、そしてお店へのお願い等々。いっぺんに考えたら頭が熱を持ちそうなので、ここら辺で終わりにします。

 

 

date

2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2002