1995.8 ドイツ国境のオランダの小さな街・ケルクラード
* カシミアおやじのたわごと *
旅の思い出は人それぞれで、主観と偏見に満ち満ちて、決して一様ではないですね。同じ所へ行って同じものを見たり体験しても、感じ方も違えば印象も違う、これこそ旅の醍醐味であり怖いところでもありますね。
ヨーロッパの中で、どういう訳か縁あって強く心に残っているのがケルクラードというオランダの小さな田舎の街。オランダ人に聞いてもあまり知らないような、人口5万人ぐらいのドイツとの国境の街です。毎日ドイツに通勤している人も多いんです。
この街にロルダックという修道院があります。尼僧院ですが、建物の一部を宿泊用として一般に開放しているんです。たぶんこの街で一番の宿泊施設だと思います。
これまでに三回訪れたんですが、ここでの体験はヨーロパの文化を理解する上でとっても勉強になりました。ロルダックは決して豪華ではないけど、重厚な建物は威厳があってそれでいて明るく、清潔で、静かで、その上安いという、願ったり叶ったりの宿でした。三食付ですが一般の家庭と同じで、暖かい肉料理はお昼だけ、夜はスープとハムとパンぐらいでヨーロッパの日常生活の中でのディナーとサパーの違いを納得したのはここでの体験でした。
尼僧院ですから立派な教会があります。神戸の甲南女子高校のコーラスの生徒たちと滞在しているときにこの教会を使わせてもらいました。とっても良い響きで、あたかも自分達が楽器の中にいるような気分でした。ゴチックの高い天井まで登った少女達の歌声が、天から降ってくるような残響に、思わず鳥肌が立つような感動を覚えたことを思いだします。
指揮者の森先生が、「二分休符の意味と効果が良く分かりますね」と言われた言葉が印象的でした。(四分休符とおっしゃったかも知れません。素人の私には違いが解りません。スイマセン)
この小さな国境の街は四年に一度、世界音楽コンテストを開催しています。それがここを訪れるきっかけになったんですが、学生たちとこの街を訪れる度に、市長さんが直々に全員を市庁舎に呼んで、お茶を御馳走して下さったり、街をあげてホームステイを引き受けて戴いたり。本当に感謝しています。
大袈裟とか派手ではなく、淡々とした本物のホスピタリティを持った思い出深い街です。