嫁いでいった蝶たち
大げさだと笑われそうですが、行き遅れた娘を嫁に出す親の気持ちはこれに近いものかもしれない。この蝶の標本を手放すのは子どものいない私にとって安堵と寂しさの混じった複雑な思いです。
この通信の前回号と当社のホームページに「差し上げます!」とドイツ箱31ケースの標本の写真を出しました。条件は[大切にしてくれる人]、[もらいに来ていただける人]、もう一つはバラにはしませんので一括でもらつてくださる方でした。 こんなわがままな条件でしたが、こちらは真剣で「娘の嫁ぎ先」をさがす心境でした。最悪は一件も希望者が無く、処分が頭をよぎります。これだけは何んとしても避けたいので希望者が出るまでいろんな方法を試みるつもりでした。
ありがたいことに博物館をはじめ方々からいろんな推しをいただきました。
標本の内容は写真を見て頂ければ分かるとおもいますが、親の贔屓目ではそこそこ、素人目ですが「中の上」か「上の下」です。
学術的なコレクションでもないので博物館はおこがましく敷居が高く、そんなところで娘が片身の狭い思いをするのではと心配になります。
優れているポイントは日本産の蝶がそこそこ揃っているのと、色や模様が綺麗なマレーシア、フィリピンなど東南アジアをはじめアフリカなどの蝶が多くあり素人目には珍しいのでアピールできると思っていました。
難題は当社まで貰いに来てもらうことでした。遠方からは送って欲しいのは重々理解していますがなにせ素人ですから少しでもぶつけたりすると台無しになってしまう超繊細な標本なので梱包の仕方が分かりません。何件かオファーを頂いたのですが、結局遠方のため受け取りには行けないということでした。
最高の嫁ぎ先が決まりました。
ある幼稚園からお話をいただきここへお譲りすることにしました。子供達が興味津々で見てくれる姿が目に浮かびます。最高の所が見つかったと大喜びです。
この標本を機に昆虫や蝶などを怖がらずに、自然に親しむ子供たちが育ってくれるたら最高だと思います。