カシミヤニットのカスタムオーダー UTO

UTOは世界へ

創業30年が過ぎ、「UTOは世界一のカシミヤニットを作っているんだから世界へ出よう」と、ついに世界に挑戦することになりました。 

 「品質は世界一」「パーソナルなニットのサイズオーダーもオリジナル」と自信がありましたが、UTOの商品とビジネスを理解してもらえるか。特にニットのオーダーは世界でも例がなく、言葉より図で説明と、資料作りに工夫を凝らし準備しました。

 プレゼンの機会をいただけた相手は、十九世紀からスーツ発祥の地・ロンドンのサビルローにあり、エドワード八世、ロナルドレーガン元アメリカ大統領、ファッションだとココ・シャネル、ユベール・ド・ジバンシィなどそうそうたるお客様を顧客にもつ「ハンツマン」という、超名門の高級紳士服店です。

 格調高いお店の前に立つとやはり緊張いっぱい。ドキドキで初めての海外営業が始まりました。

 初めましての挨拶もそこそこに迎え入れてくださったのは、現場トップのクリエイティブマネージャー・キャンベル氏。

 まずUTOのカシミヤのセーターを手に取って、開口一番「こんなしっかりしたセーターは見たことない。」と感激しきりで、素材・つくりなど一つずつ説明すると、その度に「そうだよね。品質を見ればわかる。」と言い頷いてばかりです。

 ましてや、カシミヤニットをカスタムオーダーで作ってくれるなんて、とさらに感激。一枚一枚自社工場で作っていて、自然乾燥の写真をみて乾燥にまでケアをしているモノづくりに感嘆の様子で「さすがは日本のモノづくり。この前スタートした日本のネクタイブランドも同じだった。すぐにでも商売を始めたい」と、トントン拍子で話が進みました。

 「ヨーロッパの仕入は最低発注枚数が厳しく在庫リスクがあり、追加生産は受け付けないのが当たり前。さらに、比較的薄手のカシミヤセーターなので穴があいたり廃れて返品になることもあることも悩みの種だった」そうです。

 そんな中で、「丈夫で洗えるカシミヤセーターを、一枚でも作ってくれて、送料さえ払えば二~三週間で作ってくれる。毎年世界中を回って探しているがそんなブランドを初めて知った」と言って頂き、私の当初の危惧はすっ飛んでしまいました。

 UTOが創業した1990年ごろ英国のカシミヤは今の日本と同じしっかりした糸が主でしたが、その後イタリアの台頭でフンワリとした甘目になってしまったようです。

 日常的に側にある自社のカシミヤニットの「風合い」を想像以上に評価してもらったことに私は驚いて、創業者の宇土が常々、「UTOカシミヤは購入し着用して、ご自分で洗濯して3~4年ぐらいしたころに一番風合いが出るように詰め気味にして硬めに編んでいるので、店頭でお客様が手に取った時にヨーロッパの製品の方がより軽くフンワリしていると言われるかもしれないけど、長年着用してもらえば必ずわかってもらえる」と言っていたことを想い出し、今回の経験で腑に落ちました。

 日本ではUTOのビジネスを理解してもらうのがあんなに大変だったのに、初の海外営業でしかも英国の超有名店から高い評価を受けて取引が始まり大成功ですが、それ以上にUTOのモノ作りに自信をもてたことが何よりもの収穫でした。

 その後、ハンツマンのニューヨーク支店でもやりたいという依頼があり、アメリカへの足がかりが出来ました。さらにサビルローに出店しているスイスの高級店からもオファーがありロンドンのお店とチューリッヒ、ジュネーブ、バーゼルというスイスの三大都市での展開も進んでいます。

 「日本一は日本中から、世界一なら世界中からお客様が来てくれる」は宇土の口癖ですが、日頃から世界一を目指して日々モノ作りをしているUTOは「世界中にお客様がいらっしゃる」と、自信をもって言えるよう今後もメイドインジャパンのカシミヤを世界に展開したいと思います。

                        

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