UTO(株式会社ユーティーオー)

1996.8 緑あふれる英国のカントリーサイド 

エッセイ * カシミアおやじのたわごと *

  時間に制約された中での海外旅行。移動といえばもっぱら飛行機ですね。ヨーロッパの中では国際特急列車(TEE)や、縦横に発達した高速道路を使っての移動手段も大変有効な手段ですが、やっぱり飛行機が移動の主役。でも、ひとっ飛びしたり、高速で通り過ぎてしまうには、あまりにももったいないのがヨーロッパの田舎です。

  ドイツのバイエルン、スイスやチロル、デンマークの北海に面した村など、ヨーロッパの田舎は大都会の魅力に優るとも劣りません。そんな中から、今回は英国の田舎。気取って、英国のカントリーサイドです。

 イギリスの田舎をのんびりドライブすることは、単なる移動の手段ではなく、立派な旅の目的の一つになると思います。

 大都会や名所旧跡などは教科書やガイドブック、マスコミなどから多くの情報が得られ、それなりの予備知識を得ることが出来るんですが、情報の少ない田舎は実際に訪れるまではなかなか分からないものです。

  私は、初めて訪れたロンドンより、初めてのイギリスの田舎の方がずっと印象的でカルチャーショックがありました。

 物の豊かさや利便性という面では、日本の方が進んでいると思いますが、心のゆとりというか、豊かに暮らすと言う事に対する考え方にかなり隔たりがあるように思います。この頃は『ビズ』をはじめ、英国式庭園や植物と主体にしたガーデン誌が人気があるようですが、英国人は緑で地面を覆い尽くさないと気が済まない国民性なのか、サッカーやラグビーのグランドはもちろんほんの小さな空地まで芝を植え、手入れをして慈しんでいるのが伝わってきます。

 また、建物も緑に最も調和するように建てられているような気がします。この緑の多さこそが『英国の田舎は世界一』と言われる所以だと思うのです。

  ニットの仕事で訪れたノチンガムやドンカスターの郊外の村も、典型的な美しい英国の田舎でした。緑の牧場に、オークツリーと呼ばれる樫の大木が点々と陰を落とし、羊が草を食む風景や、緑の生け垣に囲まれた庭には花が溢れる美しい村がいたる所に見られます。出来たら半年間ぐらいここの住民になってみたいような村です。

 伝統的なハイゲージニットで有名な会社や工場のシックな建物も、手入れの行き届いた花壇に囲まれ、この環境にピッタリと調和しています。

  そんな静かな田舎でも夕方のパブは人でいっぱいです。人と接する機会が少ない閑静な住宅の住人達が、人恋しくて会話を求めてやってくるのでしょうか。ワイワイ、ガヤガヤ、凄い喧噪です。こんな処で地域のコミュニティが作られてくるのかと、英国の田舎の社会を垣間見たような気がします。

 こんな静かな田舎だからこそ、狭くて騒々しいパブが彼らのリゾートなのかも知れません。

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