1999.5 氷河時代の生き残り ウスバシロチョウ
* カシミアおやじのたわごと *
蝶の話です。
ウスバシロチョウという名前を知っている人はかなり自然派の部類だと思います。
蝶は粉が付くからイヤと言う人が多いようですが、このウスバシロチョウは羽根に蝶特有の鱗粉(リンプン)がほとんどなくサテン地のヴェールのように羽根を通して向こうが透けて見える清楚な姿の蝶です。
5月の連休の頃、東京の奥多摩あたりの新緑の縁を飛んでいたり、里山の縁のネギ坊主やハルシオンにぶら下がって吸蜜しているこの蝶を見かけます。清楚な割には吸蜜の時だらしなく羽根を広げる様はちょっと興ざめですが。
大きさはモンシロチョウより一回り大きく、ゆったりと飛んでいますが、たぶん普通の人にはモンシロチョウぐらいにしか見えないでしょう。しかし、シロチョウと名前がついてもアゲハチョウの仲間です。
アゲハチョウ科の中のパルナシウス属で、ギリシャ神話の太陽神アポロンが住んでいるパルナッソス山が名前の由来です。今世紀初め頃、ヨーロッパのコレクターの間では大変に人気のあった蝶たちです。
この仲間はほとんどがヨーロッパアルプスやロッキー、ヒマラヤなどの高山に住んでいるいわゆる高山蝶です。
日本にはこの仲間は3種類。中でも北海道の大雪山に住むウスバキチョウは透けた羽根が黄色みがかって、下羽根に赤い紋があるきれいな蝶ですが、高山植物のコマクサしか食べないという蝶屋垂涎の的の蝶で天然記念物です。勿論採集禁止です。
ヨーロッパに住む仲間のパルナシウス・アポロウスバシロチョウという半透明の羽根に鮮やかな赤い紋の奴をスイスのアイガーの麓のグリンデルワルドのリフトに乗っている時に、足下の牧草地のアザミの花に吸蜜するのを見つけました。大感動で、リフトから飛び降りたいほど興奮した覚えがあります。
アルプスの山々、青い空、広々とした牧草地に飛ぶこの蝶は今だに脳裏に焼き付いています。
ウスバシロチョウはこの仲間では世界中で一番南に生息している蝶です。
今年も恩方小学校の裏の梅林へ、逢いにいこうかな。