7. 編み地の話
ニットには沢山の編み地がありますが、基本は何と言っても天竺(てんじく)編みとゴム編みです。
業界では天竺といっていますが、天竺とはひら編みのことです。
天竺には表目と裏目があり表目は縦に編地が並んで軽快で目づらが揃って光沢性に富む編地です。
特にカシミヤなどの細かいゲージではいかに均一に揃った綺麗な編地にするかが勝負です。裏目は横に編地が並んでいて表面よりは疎に見えるのでちょっとカジュアルに見えます。
フランスのデザイナーのソニアリキエルはこの裏目が好きなようでよく多用し、特に彼女の得意なボーダーなどは殆ど裏編みを使っていますよね。
ニットの編地の横端を『みみ』と呼んでいますが、天竺は表と裏の編み組織が違うことでみみの部分が丸まろうとする習性があります。セーターになった状態では両脇や袖下が縫ってあるので判りませんが編んだばかりの編地を平面に置いたら両側からクルクル丸まってきます。この特徴を生かしたのが袖口や裾のロールです。編み出しから何にもしないで編むとロールになってしまうので通常は裾や袖口の編み始めにゴム編みや袋編みにすることで丸まるのを防いでいるんです。
ゴム編みは伸び縮みをする裾や袖口で活躍する編地です。
オーソドックスなセーターはこのゴム編みと天竺の2つの編地を組み合わせて編まれているケースが多いと思います。裾や袖口のリブ部分が5~6センチのゴム編みで始まって身頃はすべて天竺編みというやつです。電話なんかで話をしていて『普通のセーターなんです』と言われるときは大体この手のリブがゴム地で大半が天竺という編地のセーターのことだなぁと想像しています。
衿にもゴム編みをよく使います。特にタートルネックなどは頭が入るほど広がって細いネックに収まるというニットならではの素晴らしい伸び縮み具合です。
ゴム編みはいろんな類があります。
横編機の前後の針を一本一本を交互に使って編む1x1(いちいち)、三本ずつを交互につかう3x3(さんさん)とか、針立てで見え方も伸縮性も変わってきます。一般に数が多いほど伸縮性はなくなっていきます。
総針といわれる編み方で、専門的には編機の前方と後方の総ての針で編む編地まであります。
お手元のセーターのゴム編みを見ていただけると判ると思いますが表になっている山と裏のほうの山を数えてみると1x1なのか3x3なのかすぐわかると思います。
ただ、2x1か2x2かは見た目も同じで殆ど見た目では分りませんし、説明も難しいんです。というより僕自身がきちんと理解しているかどうかも自信がありません。それほど2x1か2x2なのかは難しいんですが、僕のレベルではあんまり関係ありませんので編みのプロにお任せです。
もう一つ袖口や裾の代表的な編み始めが袋編みです。
袋編みは裏表をつまんでみると二重になって袋状になっているのが分かると思います。手編みや家庭機ではなかなか出来ない編み方です。ゴム編みの代わりに編み出しで使うケースが多く、編み目が細かく整っているのですっきりした印象になります。UTOのベーシックシリーズの一部は裾や袖口、衿はこの袋編みです。
インナーとしての着用を想定した場合はジャケットなどの下に着用したときに裾や袖口を一番細くすっきりして見えるようにこの袋編みをよく使っています。
他にもいろいろな編地があります。畑の畝のような畦編み、連続したひねりで縄模様を表現する縄柄(ケーブル)、レース柄。多色や絵柄ができるインターシャやジャガード、等々。いろんな編地を組み合わせることで無数の表現が可能です。