2002.3 八重桜燦讃
* カシミヤおやじのたわごと *
小金井に住んでいて、『この街に住んでいて良かったな』と思える一番の処が小金井公園です。
あの染井吉野の喧騒から約二週間後、染井吉野はすっかり葉桜になり普段の静かな公園に戻り、訪れる人が常連さん達に戻ると、公園の西の一角にある桜の園の八重桜が開き始めます。
桜の名所は日本中にあるでしょう。この付近では国立の大学通りや桜通り、狭山湖など地元自慢の名所がありますが、八重桜がこんなに見事なところは知りません。
おらが桜が一番と贔屓の引き倒しの感も無きにしもありませんが、小金井公園の八重桜の素晴らしさを見直します。
八重桜は一本でかなりの存在感があります。また開花時期が他の木々も芽吹いた頃で新緑とのハーモニーが美しさを一層際だたせます。
淡い桜とクヌギの褐色がかった淡い緑、それよりちょっと深い緑のケヤキ、透明感のあるカエデの黄緑、シルバーがかったコナラ。そして陽の当った鮮やかな緑と葉陰の緑、その上風の動きにも微妙に変化します。自然の持つアート感覚には人間がいくら頑張っても勝てませんね。
また、八重桜は晴れても曇っててもいいですね。小雨の中にけぶる八重桜こそ妖艶な感じがします。
花びらが毬のようにぶら下がって咲く様が大仰で品が無いという人もいますが、私は群れになった染井吉野より好きです。
ここの八重桜は桃白、太白、など雅な名前をもった花達は、咲き方や色もそれぞれ特徴があり、芽吹きと一緒だったり開花の時期もまちまちで、こっちが終わったら向こうという具合に長い期間楽しませてくれます。
かすかに香る駿河台という名前の花。公園の隅にひっそり咲いているこの花を知っている人は必ず立ち止まって香りを嗅いで行きます。
染井吉野の喧騒と比べてしまうのか、訪れる人達も一応に寡黙で心の中にほの温かさを秘めている様子です。
満開の木に近寄って見上げると、大きな滝を下から見上げたような、まるで花の洪水が流れ落ちている滝の中にいるような錯覚にもなります。
淡い桜色と空のコントラスト、はねた枝の花は桜色のしぶきが空に散っているように見えます。
春爛漫の至福の時間です。