2005.11 日本のニット作りの現状
* カシミアおやじのたわごと *
そこそこの商品を大量に
日本で販売されるセーターのほとんどが輸入というのをご存知ですか?その大部分が中国からです。
ニット業界では1980年代後半から輸入が急激に増え始めました。その頃の輸入品はまだ素材のバリエーションも少なく品質もあまりよくなく如何にも粗悪品という製品も多くありました。その後のバブル崩壊、販売不振とデフレ圧力で日本の10分の1という人件費、製造費の安さを求め、ロットの多さとまあまあの出来を我慢しながら、アパレルは一斉に海外生産に向かいました。
その結果、少品種多ロットは海外で、多品種少ロットは国内でという構図になってしまいました。
少品種多ロットという効率のいい飯の種を奪われた国内の工場は縮小と大リストラ、特に経験が長く給料の高い人たちが対象になってしまったようです。製品という完成品の輸入に伴って、製造に関わる糸商さん、染屋さん、ボタン等の資材屋さん達も当然縮小になり益々業界は縮小スパイラルです。
今、業界は生き残る為に皆必死。日本の経済発展と共に発展しそれに伴っていた勢力図や設備などの遺産も、成長の鈍化とともに大きな設備をもつ工場ほど苦しいという負の遺産に変わってしまったようです。
それまでアパレルメーカーだけと取引していた工場もアパレルからの反発を覚悟の上でお店にセールスをかける所も出てきました。アパレルの方が先に海外生産にシフトして注文が激減しているんですから文句を言えた義理でもないですね。大量に注文を出してくれそうな大型小売りのチェーン店やスーパー、百貨店などへアプローチをかけるのは当然の流れでしょう。一方小売店のほうもクリエイティブな商品は専門のアパレルへ、平場の商品は工場へとアパレルへの依存度を減らして使い分けをしているようです。
工場には生き残る為に頑張ってほしいと思いますが、大いに気になることがあります。
物作りでの工場に対する要求では、専門知識や経験の豊富なニットアパレルは他社との差別化の為にもかなり細かく高度な物づくりを求めます。それに対して、チェーン店やスーパー、百貨店はどちらかというと安く早くという要求が先行するようです。両方の要求に同時に対応していくには難しく結局注文の多いほうに顔が向くようですし、どうせアパレルの難しい要求をこなしていても結局あんまり注文も来ないんだからと諦めれれているのかもしれません。
多くの従業員と設備を持つ工場は大きなロットの仕事をこなしていかないと存続が難しいことはよく理解できます。しかし大きなロットの製品ほど一枚あたりの値段はどんどん安価になっていますしその分野での競争相手は中国などの海外メーカーです。そこでの競争もかなり厳しいと思います。
UTOとしてはグレードの高い物作りが命ですので、高度な物作りをお願いをすると、あたかも無体を言っているぐらいの理解しかしてもらえない工場もあり、ビックリするというか呆れるというか。これでは先が思いやられると言うより話にならないことも多くありました。 カシミヤは素材のひとつですがクオリティとしては最高の素材です。最高の物作りをするのが当然ですね。それには丁寧なもの作りと高度な技術と熟練が求められます。
これはあくまでも私の感想ですが、物作り優先の工場が本当に少なくなりました。というよりもの作り優先では生きていけないんでしょうか?アパレルが、小売店が、消費者がいい物作りを要求していないんでしょうか?
かくなる上は自分達で作るしか方法がないでしょう。なにせUTOは最高の物作りをお願いしながら、一枚一枚という、工場からは塩を撒かれるような要望なんですから。