2007.2 初めての本の出版
* カシミアおやじのたわごと *
昨年十月、このニット便りで掲載している『カシミヤとニットの話』を一冊の本にすることが出来ました。
この通信の連載が元ですが、元原稿は約5年間分の連載で19回分。「これでだいたい半分ぐらいの量ですから、あと半分を書いてください」と繊研新聞社・編集の宮下さんは簡単に言ってくれます。原稿の締め切りはふた月後。5年で書いた分と同じ量を2ヶ月弱で書くのは僕にとってはおおごとです。
今までこのニット便りを書いたのは早朝と電車の中と休日の図書館でした。元来書くのが遅い上にいざ本になると間違いや勘違いがないようにと確認しながら書くのでなかなか筆が進みません。会社では電話や用事が次々に出るので全然集中できませんし、皆が忙しく仕事してる時にネットでの調べものはなんとなく気が引けます。こんなとき『著名な作家先生ならどこかのホテルや旅館で執筆だろうなぁ、うらやましいなぁ』なんてぼやきがでます。
以来、朝5時起きでパソコンに向かいます。早朝の1~2時間は集中しだしたらあっという間に出勤時間が来てしまいます。山梨工場へ向かう列車の中は貴重な時間です。都心へ向かう通勤とは逆方向ですからがらがらのボックス席でPCを広げて原稿が書けました。
時間もないのに、初めての本だから書きたいことが沢山あります。あれもこれも、なんと云ってもこの本の出版をUTOのニットの売上につなげたいという下心がありますからつい宣伝っぽい文章になってしまいます。
そんな原稿を宮下さんに渡すと、「ここはちょっと」としっかりダメが出るんです。こっちは抵抗しますが「著者は宇土さんですが本の発行はあくまでも繊研新聞社ですから」と云うようなビミョウなプレッシャーが掛かります。新聞社は公平がモットーなのでUTOやニットに偏っても都合の悪いんですね。なるほどーと感心することばかり。
本になることを一番実感したのがゲラ刷りが上がってワープロの字が印刷のスタイルになった時です。ふ~ん、これが本か?感傷に浸っている暇もなく一冊分の原稿を殆ど一日でチェック。自分で書いた文章なのでつい読み進んでしまいます。『下手な文章だなぁー』と思いつつも先に進まねば時間がありません。
かくして出来上がった本。どんなに急いで上げる事情があったとしても本になったらずっと残ってしまいます。ああすりゃ良かった。こう書けば良かった。と反省しきりですが、読者の方からの「読みやすくてニットのことがよくわかったよ」という反響に一安心。『取引をしたい』というお店からの連絡に嬉しさひとしおです。次はもっといい本が書ける気がしますが、次があるかどうか・・・。