上高地 帝国ホテル 上高地・長野
上高地帝国ホテルで一番好きな場所は、穂高に向いた二階のテラス。
山にかかる雲。木々の揺らめき。小鳥達の囀り。梓川のさざめきに耳を凝らしたり、備え付けの望遠鏡で穂高と格闘する登山者を追いかけたり。一日中ここにいても飽きません。
上高地帝国ホテルは長年の憧れの場所でした。その憧れの地で一番贅沢な、なにもしない時間を過ごす。これぞ贅沢の極みです。
どっしりとした石組みの土台に木造の建物と落ち着いた赤い色の三角屋根のスイスシャレー風と言われる上高地帝国ホテルが、穂高岳を背景にした姿は上高地のシンボル的存在で、僕の山岳ホテルのイメージの原点です。
自然の中の人造物はあまり好きではありませんが、このホテルは上高地の自然と調和して好きです。
上高地での楽しみは何と言っても歩くこと。
ホテルの裏手から歩き始めて、梓川の河原に広がる田代池の湿地を、岩魚を捜しながらのんびり歩き回る。
上流から流れてくる獲物を自分のテリトリーで待構えている岩魚の行動を眺めていると、なんだか釣りをしている気分になってあっという間に時間は過ぎてしまいます。
また、寝転んで流れて行く雲を眺めていると、山々や木々、自分までも動いているような感じです。
眠気が襲ってきたら時間を気にせずにひる寝を楽しんでもいい。
うだるような下界の暑さを思うと、最高に贅沢なひる寝です。
もう一つの楽しみはホテルで作ってもらったお弁当。
海苔で挟んだおにぎりに香の物がついているだけのシンプルなお弁当ですが、経木で巻いた心づくしのお弁当は散歩の一番の他の楽しみ。
大正池まで下りてきて、カモと遊んだり、ボートの上から焼岳を堪能したら、帰りは梓川に沿いに。
今度は木々の間や梓川の流れの上から穂高が見え隠れします。
登山者には鼻で笑われて、見向きもされないコースかもしれない。実際自分も若い頃は一刻も速く高みに行きたくて、こんな処でブラブラすることは考えられませんでしたが、今ではリゾートしての上高地を最高に楽しめる大好きなコースです。
天気が悪かったら、大きな暖炉のあるロビーで、日がな読書で過ごすのもいいし。お喋りで過ごすのもいい。久しぶりに友人に絵葉書でも書いて驚かしてやるのもいいですね。葉書を書いている時は、友人をお喋りしている時間だから。
ロビーに漂うコーヒーの香りや暖炉の煙のほのかなにおい。決して不快ではないが、山の中にいるとあらゆる感覚が敏感になるような気がします。
一度、涸沢まで行って穂高を眺めたいと思っているのですが、実現するかなぁ、、、。